放火をした場合に問題となる罪

放火をした場合に問題となる罪

昨今報道等で話題となっている「放火」をした場合に問題となる罪やその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。

【ケース】
神奈川県三浦郡葉山町在住のAは、三浦郡葉山町内にて生活している年金受給者です。
Aは夫Vと共に生活しているのですが、Vは寝たきりの状態であるためいわゆる老老介護を行っていました。
そして、Aについても心身ともに疲弊し、軽度の認知症との診断を受けました。

ある日、AはVから「介護が出来ていない。」「これまで誰のおかげで生きてこられたと思っているんだ」等といった罵詈雑言を浴びせられました。
そこでカッとなったAは、寝たきりのVがいる自宅の入り口にストーブ用の軽油を撒き、ライターで火をつけました。
近隣住民が放火に気付き通報した結果、三浦郡葉山町を管轄する葉山警察署の警察官は、Aを現住建造物等放火罪で現行犯逮捕しました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【放火についての罪】

ご案内のとおり、本年京都にて戦後最悪の放火殺人事件が発生しました。
日常生活に必要不可欠な「火」ですが、ともすれば自分や他人の生命を奪いかねない極めて危険な凶器にもなり得ます。
当然、我が国の刑法等は放火を処罰対象としていますが、放火した物が何かによって適用される罪が異なります。

・現住建造物等放火
ケースや京都で発生した放火事件のように、人が住んでいる住宅や人が仕事をしている職場などに放火をする行為は現住建造物等放火罪という罪に当たり、殺人罪同様の厳しい処罰規定を設けられています。
つまり、結果的に幸いにも死傷者が生じなかった場合であっても、殺人をした場合と同様の刑事処罰を受ける可能性があるということになるのです。

刑法108条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

・非現住建造物等放火
人が住んでおらず、且つその時点で人がいない場所に放火した場合には非現住建造物等放火罪が適用されます。
これは、独身の方が自分の家に放火した場合や、他人を殺害してその証拠隠滅を図る目的等で家に放火した場合に適用されます。
ただし、公共の危険を生じさせずに(例えば、隣近所が遠く離れていて延焼の心配がない場合等)自分が所有する建造物に放火する行為は不可罰となります。

刑法109条1項 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
同条2項 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

・建造物等以外放火
上記(現住建造物等放火罪・非現住建造物等放火罪)に当てはまらない物を放火した場合には、建造物等以外放火罪が適用されます。
ただし、こちらについても公共の危険を生じさせなかった場合には不可罰となります。

刑法110条1項 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
同条2項 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

・森林法違反
放火した対象が森林だった場合、刑法ではなく森林法に違反する場合があります。
森林に放火する行為は、木の性質上燃えやすいことや木々が密集しているために燃え広がる可能性が高く、立地によっては消火活動も容易ではないため、極めて危険な行為です。

森林法202条1項 他人の森林に放火した者は、二年以上の有期懲役に処する。
同条2項 自己の森林に放火した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
同条3項 前項の場合において、他人の森林に延焼したときは、六月以上十年以下の懲役に処する。
同条4項 前二項の場合において、その森林が保安林であるときは、一年以上の有期懲役に処する。

【放火の罪で弁護活動】

繰り返しになりますが、放火は極めて危険な犯罪で、処罰も重いものになっています。
中でもケースのような現住建造物等放火罪については、裁判員裁判対象事件となっています。
ケースについて言うと、弁護士は逮捕後今後の見通しの説明や取調べでの対応についてのご説明をするほか、釈放・保釈を求める弁護活動を行います。
また、裁判になる可能性が極めて高いため、法廷で例えばAについては認知症の診断を受けているところ、放火をした時点で自分の行動を理解していたのか(責任能力の問題)や、責任能力があった場合には老老介護による疲れ等といった情状面を主張するといった弁護活動が考えられます。

神奈川県三浦郡葉山町にて、ご家族が現住建造物等放火で逮捕されて刑事事件を専門とする弁護士をお探しの方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部までご連絡ください。

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