※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。
執行猶予とは

執行猶予とは、有罪としての刑罰の言い渡しは受けるも、一定期間その刑の執行を猶予し、その一定期間(執行猶予期間)、犯罪を行うことなく無事過ごすことができれば、刑罰の効力がなかったことになるという制度です。
例えば、「被告人を拘禁刑2年に処する。この裁判が確定した日から4年間この刑の執行を猶予する。」という判決内容であれば、判決後すぐに刑務所に行く必要はなく、その後4年間、一度も犯罪を行うことなく無事に過ごせば、その後も刑務所に行く必要はなくなるということです。
ただし、執行猶予期間中に、再び罪を犯してしまった場合、執行猶予が取り消される可能性があります。
そうなると、再び犯してしまった罪についての刑と、猶予されていた刑が合わせて、執行されることとなります。
執行猶予の条件
執行猶予がつくには、法律上定められた条件があります。
通常の執行猶予
- 以前に拘禁刑に処せられたことがない人か(初犯者)
- 以前に拘禁刑に処せられたことがあるが、その刑の執行が終わった日から5年以内に拘禁刑に処せられたことがない人(準初犯者)
以上の①または②にあたる人が、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言い渡しを受けた場合であるという条件をみたせば、情状により、その刑に執行猶予がつく可能性があります。
再度の執行猶予
拘禁刑の執行猶予期間中に罪を犯した場合、通常その犯罪の刑に執行猶予はつきません。
しかし、例外的に再度執行猶予が付される場合があります。
法律上、
- 2年以下の拘禁刑の言い渡しを受け
- 情状に特に酌量すべきものがある
- 再度の執行猶予期間中における犯行ではない(保護観察の仮解除中を除く)
という3点を満たす場合、執行猶予中に犯した罪について再度執行猶予判決を得ることが可能となります。
執行猶予制度の改正
改正刑法に基づき、2025年6月1日から、新しい執行猶予制度が施行されています。2025年6月1日以降の事件に適用される新しい執行猶予制度の主な改正点は以下になります。
1 再度の執行猶予の条件緩和
これまでは、1年以下の懲役または禁錮を言い渡す場合のみ、再度の執行猶予が可能でした。
改正後は、2年以下の拘禁刑(懲役と禁錮の一本化)を言い渡す場合にも、再度の執行猶予が可能になります。
拘禁刑の上限が1年から2年に引き上げられたため、再度の執行猶予の対象となる刑の幅が広がります。
2 保護観察付執行猶予中の場合の再度の執行猶予
改正前は、保護観察付執行猶予中に再犯した場合、再度の執行猶予は不可能でした。
改正後は、保護観察付執行猶予中に再犯した場合でも、再度の執行猶予が可能となります。
ただし、再度の執行猶予期間中に再犯した場合は、保護観察の仮解除中を除き、さらに再度の執行猶予を付すことはできません。
3 執行猶予期間満了後の再犯の場合の効力継続
執行猶予期間中の再犯について公訴が提起された場合、執行猶予期間満了後も一定の期間は、刑の言渡しの効力及びその刑に対する執行猶予の言渡しが継続しているものとみなされます。
これにより、いわゆる「弁当切り」(前刑を失効させるために公判の引き延ばしをする行為)はできなくなったと考えられます。
執行猶予をつけるための弁護活動
執行猶予をつけるためには、以下のような、情状面で被告人に有利な点があることを主張していくこととなります。
犯罪に関する有利な情状
- 犯罪行為の悪質性が低い
- 犯罪行為の危険性が低い
- 被害結果が軽い
- 動機などに同情すべき点がある
被告人に関する有利な情状
- 被害弁償・示談が済んでいる
- 前科・前歴がない
- 更生の意思があり、更生の環境が整っている
- 真摯に反省している
- 常習性や再び罪を犯す可能性がない
一部執行猶予
2016年6月1日から、「一部執行猶予」という制度がスタートしました。
一部執行猶予とは、拘禁刑の刑期のうち一部の期間を受刑させた後、残りの刑期については、一定の執行猶予期間をつける制度です。
一部執行猶予をつけることができる条件については以下のとおりです。
- 3年以下の拘禁刑の言い渡しであること
- 前に拘禁刑に処せられたことがない人(初犯者)か、前の拘禁刑の執行終了から5年以内に拘禁刑に処せられたことがない人(準初犯者)か、前の拘禁刑の執行猶予期間中である人(執行猶予中の再犯者)のいずれかにあたること
- 情状面からみて、刑務所暮らしの後に、一定期間社会内で処遇を受けることが再犯防止のために必要かつ相当であること
また、②の初犯者、準初犯者、執行猶予中の再犯者にあたらない場合であっても、違法薬物の単純所持や使用などの犯罪の場合は、①に加え③情状面からみて、刑務所暮らしの後に、一定期間社会内で薬物依存の改善のための処遇を受けることが再犯防止のため必要かつ相当であるという条件をみたせば、一部執行猶予をつけることができます。
ただし、この場合は、必ず保護観察が付き、また薬物処遇プログラムの受講が義務付けられます。
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