宗教上の理由で死体遺棄
宗教上の理由から、死亡した家族をそのまま放置したという場合の死体遺棄事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県川崎市多摩区在住のAは、川崎市多摩区内の会社に勤める会社員です。
Aは数年前にとある宗教を信仰するようになり、その宗教の経典をとても大事にしてきました。
Aには看病をしていた母が居ましたが、ある日Aが会社から帰宅したところ、母は病気が原因で死亡していました。
Aは、経典によると死んでもなお魂は肉体に宿っているのだから、火葬などしてはいけないと考え、役所に届出を出さずに自宅で母のご遺体をそのままにしていました。
それから数日経ち、Aの自宅から異臭がすることに気が付いた近隣住民が神奈川県川崎市多摩区を管轄する多摩警察署に相談し、多摩警察署の警察官が任意で聴取した結果、Aによる死体遺棄事件が発覚したためAを逮捕して捜査を開始しました。
≪ケースの事例や出てくる宗教については全てフィクションです。≫
【宗教について】
我が国の憲法は、第20条1項で「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と定められています。
よって、皆さんがどのような宗教であっても、信仰すること自体は自由とされています。
但し、信仰によって行われる行為がいかなる場合でも認められるわけではありません。
加持祈祷で信者である少女を死に至らしめたという傷害致死事件で、判例は、「宗教行為の一種としてなされた加持祈祷行為であっても、他人の生命、身体等に危害を及ぼす有形録の行使により被害者を死に致したものである以上、それは信教の自由の保障を逸脱している。」と示しました。
つまり、宗教の自由は保障されているが、どのような宗教行為であっても保障されるわけではない、ということです。
【死体遺棄罪について】
死体遺棄罪は死体損壊罪とも呼ばれ、死体等を損壊したり遺棄したりすることで成立する罪です。
刑法190条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
ケースのAは、自身の母親が亡くなったにもかかわらず自宅に母親のご遺体をそのまま放置していますので、死体を遺棄したとして、死体遺棄罪の嫌疑がかけられます。
例えば、これが不正年金受給などを目的として行った死体遺棄罪であれば、死体遺棄罪に問われますし詐欺罪等の罪に当たることも考えられます。
一方で、ケースのように宗教行為として死体を遺棄していた場合、違法性を争う余地があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所の弁護士は、死体遺棄事件などの刑事事件を専門としています。
死体遺棄罪は、罰金刑がないため検察官の判断次第で裁判になります。
そのため、早期に弁護士に相談をした上で、裁判を回避するための弁護活動、あるいは裁判になった場合にどのような対策が必要か、といった対策の検討をすることをお勧めします。
神奈川県川崎市多摩区にて、ご家族が宗教行為の一環としてご遺体をそのまま放置してしまったことで死体遺棄罪の嫌疑をかけられ、裁判になるかもしれないという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部までご連絡ください。