銀行の背任事件

銀行の背任事件

銀行の背任事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。

【刑事事件例】

神奈川県横浜市泉区にあるV銀行W支店の貸付担当者であるAさんには,旧友でありIT企業を経営するBさんがいました。
ある日,Aさんは,Bさんから,「会社の財務状況が急激に悪化し,倒産の恐れもある」と相談を受けました。
そこで,Aさんは「友人の頼みだから」と考え,Bさんの会社には十分な担保はなかったものの,担保ができたとの虚偽の書類を作成した上で,V銀行W支店の支店長に融資をさせました。
その後,B会社の経営状態はさらに悪化し,倒産したことをきっかけに,Aさんによる背任事件が明らかになりました。
Aさんは神奈川県泉警察署の警察官により背任罪の容疑で捜査を受けています。
(フィクションです。)

【背任罪とは】

刑法247条
他人のためにその事務を処理する者が,自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で,その任務に背く行為をし,本人に財産上の利益を加えたときは,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

背任罪は,刑法247条に規定された財産犯です。
背任罪を犯した者には,「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます。

【横領罪(業務上横領罪)とは】

刑法252条1項
自己の占有する他人の物を横領した者は,5年以下の懲役に処する。

刑法253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は,10年以下の懲役に処する。

横領罪は刑法252条に,業務上横領罪は刑法253条に規定された財産犯です。
横領罪を犯した者には「5年以下の懲役」,業務上横領罪を犯した者には「10年以下の懲役」が科せられます。

【刑事事件例ではどのような犯罪が成立するか】

刑事事件例では,AさんはV銀行W支店の貸付担当者であり,実質的にV銀行W支店の金銭の処分を任された地位にあります。
この場合,Aさんは,業務上横領罪の「他人の物」(V銀行W支店の金銭)を「占有」していたとも考えられる一方,背任罪の「他人のためにその事務を処理する者」に当たるとも考えられます。
このとき,Aさんには業務上横領罪が成立するのでしょうか,背任罪が成立するのでしょうか。

ここで,既に述べた通り,横領罪の法定刑は「5年以下の懲役」,業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり,背任罪の法定刑である「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」よりも重いものとなっています。
この場合,横領罪又は業務上横領罪と,背任罪の関係については,横領罪又は業務上横領罪背任罪の特別規定であると考えられます。

そのため,第一に横領罪又は業務上横領罪が成立するかどうかを考え,横領罪又は業務上横領罪の成立が否定された場合には,第二に背任罪が成立するかどうかを考えるということになると考えられます。

【横領罪(業務上横領罪)と背任罪の違い】

横領罪又は業務上横領罪の「横領」とは,委託信任関係に背いて,権限なく所有者でなければできないような処分をすることをいいます。
すなわち,横領罪又は業務上横領罪の「横領」とは,委託された権限外にある行為のことをいいます。
となると,一応は権限の範囲内でなされたたが,実質的には任意に背く行為は,横領罪又は業務上横領罪の「横領」ではなく,背任罪の「背任」に当たる可能性があることになります・

刑事事件例では,Aさんは銀行の行員であるから,貸付行為は一応はAさんに与えられた権限に含まれると考えられるため,背任罪の「背任」に当たるかどうかを検討することになります。

【背任罪の成立要件とは】

改めて背任罪の「背任」に当たるかどうかを検討すると,背任罪の「他人のためにその事務を処理する者」とは,他人の財産上の事務を処理する者のことをいいます。
また,背任罪の「任務に背く行為」とは,誠実な事務処理者としてなすべきものと法的に期待されているところに反する行為をいいます。

刑事事件例では,Aさんは貸付先として適しているかを判断し,融資するというV銀行W支店の事務を処理する者であったということができます。
また,Aさんは,虚偽の書類を作成し,支払能力について誤った判断をさせており,ここに背任罪の「任務に背く行為」があったというと考えられます。

さらに,背任罪の「財産上の利益」があったといえるかどうかは,経済的観点から評価すべきであると考えられています。
そのため,刑事事件例のように実質的な価値の低い貸金債権を取得したことは十分な反対給付があったとはいえず,ここに背任罪の「財産上の利益」があったと考えられます。

以上より,Aさんには,背任罪が成立すると考えられます。
このように,Aさんにどのような犯罪が成立するかということについては,刑事事件に関する専門的な犯罪が必要であるため,刑事事件を起こしてしまった場合に,自分にはどのような犯罪が成立し,今後どのような刑事処分が科せられるかどうかは,専門家である刑事弁護士に判断をあおることが大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
銀行の背任事件でお困りの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部までご相談ください。

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