SNSで他人を中傷して名誉毀損
SNSで他人を中傷するような投稿を行った結果、名誉毀損の罪に問われてた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市泉区に住むAは、横浜市泉区に住む会社員です。
Aは、同じく横浜市泉区在住で同僚のVと交際をしていましたが、VはAに対しての愛情が薄れてきたことから、Aに対して別れを告げました。
それに憤りを感じたAは、Vの友人を含めた不特定の人が見られるような投稿形式にて「Vは枕営業(性交渉等の対価として契約をとるといった意味の俗語)で営業成績を残している売女だ」「Vは課長とも部長とも寝ている」等と侮蔑的な発言を繰り返し行いました。
V自身はAのアカウントをブロックしていたため知りませんでしたが、友人を通じてAの投稿について知り、憤りを感じて横浜市泉区にある泉警察署の警察官に相談をしました。
すると、名誉棄損罪の告訴状を提出してくれれば捜査ができると言われたため、名誉棄損罪での告訴状を提出しました。
後日、泉警察署の警察官は、Aを名誉棄損罪で逮捕しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【名誉毀損とは】
名誉棄損罪の条文は以下のとおりです。
刑法230条1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を棄損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50年以下の罰金に処する。
第一に、名誉棄損罪のいう「公然」という言葉についてですが、判例で「不特定又は多数人が認識できる状態をいう」とされています。
ケースについて考えると、VのようにAのアカウントをブロックしている人は見られないものの、それ以外の人については見られるような状態で投稿をしているため、不特定多数の人が認識できる状態にあると言えるでしょう。
第二に、名誉棄損罪のいう「事実を摘示」するということについては、「人の社会的評価を害するに足りるもの」でなければならず、それはある程度具体的な事実でなければなりません。
事実とは、真実である必要はなく、虚偽の内容であっても事実と評価されます、
ケースでは、枕営業で成績を上げている、あるいは具体的な人物と性交渉をしているといった具体的な事実が書かれているため、事実を摘示していると言えるでしょう。
後述しますが、この事実の摘示は侮辱罪との区別でも重要となります。
第三に、名誉棄損罪のいう「名誉を棄損」する行為について、人の社会的評価を低下させる具体的な事実を摘示することが要件となっているため、結果として名誉が具体的に侵害されることまでは求められていません。
また、名誉ではなく経済的な側面で信頼を毀損するような言動等については、信用毀損罪(刑法233条)に問われる可能性があります。
例えば、俗に言うアダルトビデオに出演している女性に対して「たくさんの人と性交渉をしている」と投稿した場合には必ずしも社会的評価が下がるとは言えませんが、ケースについては、投稿によって一般人であるVの名誉は毀損される可能性は極めて高いと言えるでしょう。
よって、Aの行為は名誉棄損罪に当たる可能性があります。
【名誉棄損と侮辱罪の違い】
名誉棄損罪と類似する罪に、侮辱罪があります。
侮辱罪は刑法231条で「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」と定められています。
名誉棄損罪の第二にて、名誉棄損罪は事実を摘示することで成立するとご説明しましたが、侮辱罪は事実を摘示しない場合でも侮辱した場合に成立する罪ですので、「あの女はクズだ」等といった抽象的な侮辱であっても侮辱罪が適用される可能性があります。
【名誉棄損罪で告訴されたら弁護士へ】
名誉棄損罪や侮辱罪といった刑法の第34章「名誉に関する罪」については、親告罪です。
親告罪は、被害者から捜査機関に告訴をしなければ、検察官は当該被疑者を起訴することができません。
よって、名誉棄損罪をはじめとし「名誉に関する罪」での弁護活動の一つに、被害者の方に告訴をしないあるいは取消してもらうことを求めることが考えられます。
その方法としては、例えば示談などが考えられるでしょう。
神奈川県横浜市泉区にて名誉棄損罪で刑事告訴をされた方や、ご家族にそのような方がおられるという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご相談ください。