未成年者を無理やり働かせた疑いで児童福祉法違反と労働基準法違反に問われたという記事について検討
18歳未満である未成年者を働かせたという報道事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【事例】
男子高校生を無理やり、祭りの露店で働かせたとして、警視庁少年育成課は5日、露天商の男性(63)ら男女6人を児童福祉法違反(有害目的支配)と労働基準法違反(深夜業の規制)の疑いで逮捕したと発表した。
警視庁によると、男性は祭りの露店を収入源とする「テキ屋」団体のトップで、神奈川県綾瀬市に拠点を置いている。少年グループに声をかけ、同県内で10人以上の少年を金魚すくいやかき氷などの露店で働かせていたという。
逮捕容疑は2023年4~10月ごろ、17歳だった高校2年生の少年を相模原市や同県厚木市などの祭りの露店で、深夜から早朝にかけて働かせたなどとしている。
男性は「18歳未満の子どもが働いているのは知らなかった」と容疑を否認しているという。
警視庁によると、露店の従業員らは、遅刻や欠勤をした少年らに殴る蹴るなどの暴行を加えたうえ、高額な制裁金を要求し「払えなかったら特殊詐欺とか強盗とかをやらせるぞ」などと脅して働かせていたとされる。
【未成年者の雇用】
[労働基準法違反]
■年齢の制限
我が国では、労働する上での最低限のルールを労働基準法をはじめとする法律・規則で規定しています。
そのうちの1つに、被用者の最低年齢が挙げられます。
労働基準法56条
1項 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。
2項 前項の規定にかかわらず、別表第一第1号から第5号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする。
つまり、一般的な進学状況だと仮定すると高校1年生になる年の4月1日以降でなければ、原則として未成年者を雇用できません。
特例として、一部の業種については、13歳以上で行政官庁の許可を得て就労することができます。
■未成年者の就労時間帯
次に、就労の時間帯です。
未成年者を雇用する場合、就労時間にも制限があります。
18歳以上の場合、深夜帯でも(深夜割増料金を支払うことで)従業員に勤務してもらうことができます。
しかし、18歳未満の場合、原則として22時~5時の間、仕事をしてもらうことは出来ません。(労働基準法61条1項)
また、例外的に、厚生労働省が「地域又は期間を限つて」未成年者の労働禁止の時間帯を23時~6時に変更することができます。
報道では、「17歳だった高校2年生の少年」を「深夜から早朝にかけて働かせた」と報じられていますので、詳細な時間は不明ですが、この未成年者の労働禁止の時間帯に働かせたことが嫌疑の一つになっている可能性があります。
[児童福祉法違反]
児童福祉法34条1項 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
9号 児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為
同60条2項 第34条第1項第1号から第5号まで又は第7号から第9号までの規定に違反したときは、当該違反行為をした者は、3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
児童福祉法は「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く」行為を禁止しています。
報道によると、児童らは露天商として働かされていたとされています。
露天商としての営業だけを以て「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的」があったとは考えにくいですが、労働基準法に違反して深夜・早朝に営業させるなどの行為は「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的」に該当すると考えられます。
また、遅刻や欠勤した場合に殴る蹴るの暴行を加えたり、賠償と称し高額な金銭を要求することで事実上支配下に置いていたと評価され、児童福祉法違反の嫌疑がかけられたと考えられます。
【労働基準法・児童福祉法に違反した場合の弁護活動】
労働基準法や児童福祉法は、児童らの生命や身体を保護する目的と、公益的目的の両側面があると考えられます。
特に報道事例では実際に被害に遭っていた児童がいると考えられます。
罪を認め反省している場合には、児童・保護者に謝罪と賠償を行い、示談の交渉を行う弁護活動が検討されます。
また、今回は計6名の方が逮捕されているため、各人がどのような立場であったか、という点も重要です。
トップで指示をしていた者と、指示を受けて児童を支配していた者との場合は、量刑に影響が生じる恐れも考えられます。
最終的に、担当する検察官は被疑者について
・犯罪を立証できるだけの証拠があるか否か
・罪を認めているか否か
・各人の立場(支配関係)はどのようなものか
・児童に直接的な暴行や脅迫を行っていたか否か
・前科や前歴はあるか
などの様々な情報を総合的に判断して、起訴するかどうか判断します。
そのため、取調べでの受け答えも重要になってくると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部では、労働基準法違反や児童福祉法違反といった未成年者の労働で刑事事件に発展したケースでの弁護活動にも対応しています。
神奈川県横浜市、厚木市、相模原市など関東一円で、家族が労働基準法違反や児童福祉法違反により逮捕され場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の弁護士による初回接見サービス(有料)をご利用ください。