不法就労外国人を雇用して家宅捜索
不法就労の外国人労働者を雇用して家宅捜索を受けた場合の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県伊勢原市在住のAは、伊勢原市内にある会社を経営する会社経営者です。
Aは、昨今の売り手市場から人材確保に苦慮していて、日本人や正規の手続きを踏んだ外国人労働者を雇用することが困難となっていました。
そんな時、就職エージェントを名乗るXがAの会社に来て、Aに対して「ウチなら最低限の金で外国人を雇用することができるよ」との営業説明を受けました。
そこでAは、Xから紹介を受けてきた外国人ら8名を雇用しました。
しかし、後日神奈川県伊勢原市を管轄する伊勢原警察署の警察官が突然Aの会社に来て「捜索差押許可状」という書類をAに見せ、オフィスや作業場などに行って雇用に関する書類や従業員のタイムカード、帳簿などを押収していきました。
Aは、家宅捜索を受けた場合、今後どうなるのかについて刑事事件専門の弁護士に無料相談をしました。
〈ケースは全てフィクションです。〉
【不法就労の外国人を雇用した場合の問題】
日本に外国人が滞在する際、入国の際に付された在留資格の中・期限内で活動をすることができます。
在留資格には、例えば外交や宗教、医療、教育、留学などの資格があるほか、配偶者(夫または妻)が日本人の場合等については永住者として在留する資格が与えられます。
そして、例えば留学での在留であればアルバイトが出来るのは1週間の内28時間以内(風俗営業は禁止)等の制限があります。
しかし、外国人の中には、それらの資格で入国してきたものの、期限内に出国しなかったり在留資格外である就労をしたりといった不法滞在・不法就労をする人もいます。
不法就労している外国人の方が退去強制されることは勿論ですが、不法就労の外国人を雇用した方は出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)に違反します。
これは、ケースのAのように例え当該外国人が不法就労であることを知らなかった場合でも、無過失の場合以外には刑事罰を課せられる可能性があります。
無過失の場合とは、例えばAは在留資格認定証明書を確認したものの、確認した書類は不法就労の外国人が偽造していた場合等があてはまります。
つまり、雇用者が在留資格・在留期間の確認を怠った場合であれば、過失があるとして刑事罰の対象となるのです。
入管法73条の2第1項 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 (略)
同条2項 前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
一 当該外国人の活動が当該外国人の在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であること。
二 当該外国人が当該外国人の活動を行うに当たり第十九条第二項の許可を受けていないこと。
三 当該外国人が第七十条第一項第一号、第二号、第三号から第三号の三まで、第五号、第七号から第七号の三まで又は第八号の二から第八号の四までに掲げる者であること。
【家宅捜索について】
憲法上、自分の住居や所持品等については、侵入・捜査・押収を受けることがないという権利が保障されています。
捜査機関はこれを承諾(家主や所有者の許可)を得た上で捜索をすることも出来ますが、家主や所有者はそれを拒む権利もあります。
そこで、捜査機関は裁判所に令状を請求し、許可が下りた場合に強制的に捜索を行う場合があります。
これが強制捜査です。
家宅捜索については、捜索の許可状が必要であるとともに捜索の結果見つかった証拠物件については差し押さえる必要があります。
これらの要素を兼ねた令状が、捜索差押許可状です。
家宅捜索の場合、通常は捜索許可状と差押許可状を別個に請求するわけではなく、捜索差押許可状1枚で、自宅やオフィスといった私的領域での捜索を行い、証拠物件を差し押さえるという流れになります。
なお、家宅捜索が行われることと逮捕されることは別で、逮捕をする場合には逮捕状を別途請求(場合によっては事後的に請求)する必要があります。
そのため、家宅捜索を受けた場合に必ずしも逮捕されるわけではありませんが、家宅捜索で押収された証拠物件を鑑定した結果違法であることを確認して逮捕するという場合もあります。
神奈川県伊勢原市にて、ご本人又はご家族の方が不法就労の外国人雇用した結果、伊勢原警察署の警察官から家宅捜索を受けた場合は、あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部までご連絡ください。