預金通帳の窃盗・詐欺事件
預金通帳の窃盗・詐欺事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,V1さん(神奈川県横浜市緑区在住)の自宅に侵入し,Vさんの預金通帳と印鑑を無断で持ち去り,V2銀行の窓口から,現金100万円を引き出しました。
後日,預金通帳と印鑑が盗まれたことを知ったV1さんが神奈川県緑警察署に通報したことをきっかけに,Aさんの窃盗事件・詐欺事件が発覚しました。
その結果,Aさんは,神奈川県緑警察署により,窃盗罪と詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(刑事事件例はフィクションです。)
【窃盗罪の成立について】
刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は,他人が占有(事実上支配)する財物を,その占有者の意思に反して,自分の占有下に移した場合に成立する犯罪です。
刑事事件例では,Aさんは,V1さんの自宅からV1さんの預金通帳と印鑑を無断で持ち去っていますので,Aさんには窃盗罪が成立すると考えられます。
また,窃盗罪を犯す手段として,V1さんの住居にも侵入しているので,Aさんには住居侵入罪(刑法130条)も成立すると考えられます。
【詐欺罪の成立について】
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪は,人を欺いて財物を交付した場合に成立する犯罪です。
より具体的にいえば,詐欺罪は,欺罔行為により被害者の方の錯誤を生じさせ,その錯誤に基づく被害者の方の交付行為により,財物の占有の移転がなされた場合に成立する犯罪です。
刑事事件例では,Aさんは,V2銀行の窓口において,自らが正当な払戻権限者であるように欺罔して,銀行員を錯誤に陥らせ,それにより現金100万円の交付(占有の移転)を受けています。
よって,Aさんには詐欺罪が成立すると考えられます。
【なぜ詐欺罪が成立するのか】
ところで,AさんがV1さんの預金通帳と印鑑を取得した場合,現実問題としては,AさんはV2銀行に預金通帳と印鑑を示せば,すぐに預金を引き出すことができるといえます。
とすれば,AさんがV1さんの預金通帳と印鑑を取得した時点で,Aさんは口座内の預金を占有(事実上支配)しているのではないかと考えられます。
もし,このようにAさんはすでに口座内の預金を占有していると考えた場合,Aさんは欺罔行為,銀行員の錯誤,銀行員による交付という一連の行為によって,現金100万円という財物の占有を取得したわけではないことになるため,詐欺罪は成立しないのではないかとも考えられます。
この場合,すでにあった占有を横領したと考えられますので,詐欺罪ではなく,横領罪が成立するとも考えられます。
しかし,Aさんが口座内の預金を占有(事実上支配)していたというためには,正当な払戻し権限が必要であると考えられています。
刑事事件例のように預金通帳と印鑑を窃取した場合,その所持に者は正当な払戻し権限があるわけではありませんので,Aさんは口座内の預金を占有していなかった,預金の占有はV2銀行にあったと考えられます。
とすると,Aさんは欺罔行為,銀行員の錯誤,銀行員による交付という一連の行為によってはじめて口座内の預金の占有を取得したといえます。
よって,Aさんには詐欺罪が成立すると考えられるのです。
【預金通帳の窃盗・詐欺事件を起こしたら】
預金通帳の窃盗・詐欺事件を起こし,窃盗罪・詐欺罪の容疑で逮捕されてしまった場合,刑事弁護士に依頼して,すみやかに身体拘束を解いてもらいましょう。
窃盗・詐欺事件で逮捕・勾留されてしまうのは,検察官や裁判官に,窃盗・詐欺事件の被疑者の方が逃亡したり,窃盗・詐欺事件の証拠を隠滅したりする可能性があると見られてしまうからです。
そこで,刑事弁護士は,検察官や裁判官に対して,窃盗・詐欺事件の被疑者の方は逃亡したし,証拠を隠滅したりしないと訴えていくことになります。
例えば,前者については,窃盗・詐欺事件の被疑者の方は定職を持っていること,家族がいること,持ち家があること,逃亡の資金がないこと,身元引受人の監視監督が約束できること,窃盗・詐欺事件の容疑を認めていることなどを主張できると考えられます。
また,後者については,窃盗・詐欺事件の証拠品は既に押収されていること,捜査が進んでおり調書の作成も済んでいること,身元引受人の監視監督が約束できること,窃盗・詐欺事件の容疑を認めていることなどを主張できると考えられます。
刑事弁護士の働きかけにより,検察官や裁判官が,窃盗・詐欺事件に被疑者の方は逃亡したり,窃盗・詐欺事件の証拠を隠滅したりしないと考えさせることができれば,すみやかに身体拘束から解放され,通常の社会生活に復帰することができるようになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
預金通帳の窃盗・詐欺事件でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部までご相談ください。