執行猶予中に万引き事件を起こすと執行猶予は取消されるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
◇執行猶予中の犯行◇
横浜市鶴見区に住む主婦のAさんは、令和元年12月1日、横浜簡易裁判所で、万引き(窃盗罪)の件で「懲役10月 4年間執行猶予」の判決の言い渡しを受けました。
しかし、Aさんは、それから4か月後の令和2年4月1日、横浜市鶴見区のスーパーで万引きをしたとして保安員に現行犯逮捕され、スーパーに駆け付けた警察官に身柄を引き渡されました。
一方、逮捕の通知を受けたAさんの夫は、妻が逮捕されてしまったことから執行猶予が取り消されて刑務所に行かなければならないのではないかと心配になり、刑事事件に強い弁護士に、Aさんとの接見を依頼することにしました。
(フィクションです)
◇「執行猶予」とは◇
執行猶予とは、被告人(起訴され刑事裁判を受ける人=Aさん)が有罪であることは間違いないものの、被告人に酌むべき事情が認められ、そのまま刑務所に服役させるには可哀そうなため、一定期間、刑務所に行くことを見送ることとし、その一定期間が経過したのちは正式に刑務所に行かなくてよいこととする、という制度のことをいいます。
Aさんは、令和元年12月1日に「懲役10月 4年間執行猶予」という判決を受けています。
この裁判でAさんに酌むべき事情が認められたことから、Aさんは執行猶予付き判決を受けることができたのでしょう。
そして、執行猶予がついたということは、Aさんは「懲役10月」という刑に服さず、社会内での更生が許されたわけです。
そして、その許された期間である4年間を何事もなく無事経過すれば、10か月刑務所に行きなさいという効力が消滅する、これが執行猶予の制度です。
なお、執行猶予期間の起算点は控訴期間(14日間)が経過した日の翌日、つまり確定日からですから、これをAさんの場合にあてはめると令和元年12月15日から(4年間)ということになります。
ということは、Aさんは、今回の万引き時(令和2年4月1日時)はいまだ執行猶予期間中であり、Aさんは執行猶予期間中に万引きを犯したということになります。
◇執行猶予の取消し◇
上記のように、執行猶予というのは、刑務所に行くことを免除したのではなく、あくまで「見送る」こと(猶予すること)にすぎません。
したがって、その執行猶予期間中に万引きなどの犯罪を犯せば、執行猶予が取り消される可能性が非常に高いのです。
刑法は執行猶予が取り消される場合として
①必要的取消し(必ず取消される)
②裁量的取消し(取り消される場合がある)
の2つの場合を定めています。
~必要的取消しについて~
執行猶予が必ず取り消されるのは、執行猶予期間中にさらに罪を犯し、その罪につき
禁錮以上の実刑に処せられた場合(刑法26条1号)
です。
ここで「禁錮以上」とは禁錮のほか懲役を含みますが罰金は含みません。
~裁量的取消しについて~
執行猶予が取り消される可能性があるのは、執行猶予期間中に罪を犯し、
・罰金に処せられた場合(刑法26条の2第1号)
・保護観察の遵守事項を遵守せず、情状が重いとき(刑法26条の2第2号)
などです。
~Aさんの場合は?~
万引きは窃盗罪にあたります。窃盗罪の罰則は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですから、Aさんが今回の万引きで起訴され刑事裁判で有罪とされれば懲役でも罰金でも処罰される可能性があるのです。
そして、懲役で処罰された場合は必要的に前の執行猶予が取り消され、罰金で処罰された場合でも前の執行猶予が取り消される可能性がある、ということになります。
もっとも、以上はAさんが起訴された場合の話ですから、起訴前の逮捕されただけの段階で執行猶予が取り消されるということはありません。
執行猶予期間中に再犯し、執行猶予が取り消されるのを避けたいという方は、今回の事件でまずは不起訴処分の獲得を目指す必要があります。
◇執行猶予中に事件を起こしてしまった方は◇
執行猶予中に事件を起こしてしまった方は、まず刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。
『執行猶予中の犯行=実刑(刑務所に服役)』ではありません。
刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の弁護士は、わずかな可能性を信じ、お客様を権利を守るために全力で弁護活動を行っております。
執行猶予中の犯行であっても、諦めずに一度ご相談ください。
刑事事件のご相談は、フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)までお気軽にお問い合わせください。