特殊詐欺事件とは?事例から学ぶ罪と罰条

特殊詐欺事件とは?事例から学ぶ罪と罰条

特殊詐欺事件は近年、高齢者を中心にその被害が増加しています。しかし、どのような行為が特殊詐欺に該当し、何が罰されるのか明確でない方も多いでしょう。この記事では、具体的な事例を通して特殊詐欺の罪と罰条について詳しく解説します。

一般的な詐欺罪と特殊詐欺罪の違い

一般的な詐欺罪と特殊詐欺罪は、一見似ているように思えますが、実は大きな違いがあります。 一般的な詐欺罪は、嘘や偽の情報を使って主に対面で他人を欺き、財産を奪う行為です。 多くの場合、双方の信頼関係が前提に詐欺行為が行われます。対して特殊詐欺罪は、電話やハガキなどを用いて詐欺を行うもので、実際には会ったこともないような不特定多数の者をターゲットにして行う、より計画的かつ高度な詐欺です。

特に、特殊詐欺は高齢者が多く被害に遭うケースが多く、手口も巧妙であるために警戒が必要です。

特殊詐欺の場合、基本的に詐欺罪(刑法246条1項)が適用されますが、手口によっては電子計算機使用詐欺罪(刑法246の2)や窃盗罪(刑法235条)が適用されます。

特殊詐欺罪の代表的な手口:「おれおれ詐欺」

「おれおれ詐欺」とは、電話を使って高齢者などを狙い、自分をその人の親族であるかのように偽装します。 主に「会社の金を使い込んだのが発覚して今日の15時までに全額弁済する必要がある」など緊急事態が発生したと偽って、お金を要求するなどの方法が一般的です。

この手口は、相手の感情や緊迫感を利用しています。 そのため、相手が冷静になる時間を与えず、速やかにお金を振り込ませようとする点が特徴です。

法律的には、この「おれおれ詐欺」は、電話などを用いて被害者をだます手口であるとして、詐欺罪が適用されます。

特殊詐欺罪の代表的な手口:「振り込め詐欺」

「振り込め詐欺」は、偽の請求書や電子メールを用いて、相手にお金を振り込ませる詐欺手法です。 こちらも特に高齢者が狙われることが多く、インターネットの普及によって手口も多様化しています。

この手法では、公共料金や税金、商品代金などを偽装し、一見正当な請求であるかのように見せかけます。 そのため、被害者は気づかぬうちに多額の金額を詐取されることがあります。

法律的には、まず嘘の請求書などを送る行為については、詐欺罪に該当します。

次に、振り込んだお金を引き出したり、別の口座に送金したりする「出し子」と呼ばれる者が登場します。この者に対しては、機械(銀行のATMなど)に不正の指令を出して利益を得る行為に当たるとして、電子計算機使用詐欺罪に問われることが考えられます。電子計算機使用詐欺罪の罰条も、詐欺罪と同じ「10年以下の懲役」で、罰金刑はありません。

特殊詐欺罪の代表的な手口:対面による「キャッシュカード等のすり替え」

特殊詐欺の中には、警察官や銀行職員などを装って被害者宅を訪問し、キャッシュカードが不正に使用されているなどの嘘をつく手口があります。この際、「安全のため私が預かります」などと言ってキャッシュカード等をだまし取る行為は、詐欺罪に問われます。他方で、「このキャッシュカードは使えないので封かんします。印鑑を持ってきてください」などと言い、被害者が印鑑などを取りに行っている隙に封筒をすり替え、被害者に気付かれないうちにキャッシュカードをだまし取る手口もあります。この場合は、詐欺罪ではなく、窃盗罪(刑法235条「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」)に処されます。

刑法における罰則:詐欺罪(第246条)

詐欺罪とは、嘘や偽の情報を用いて他人を欺き、財産を不正に取得する行為を指します。 この詐欺行為に対する罰則は、日本の刑法第246条に規定されています。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

具体的には、詐欺罪で有罪となった場合、懲役または禁錮による刑罰が科されます。 罰金については、直接の規定はありませんが、関連する別の罰則として適用される場合もあります。

一般的な詐欺罪と特殊詐欺罪の違いは、主に手口と被害の規模にありますが、どちらも基本的にはこの第246条1項に基づく罰則が適用されます。 特に、第246条1項は特殊詐欺の様々な立場の者に対して適用される可能性がある罪です。

特殊詐欺の厳罰化

特殊詐欺事件については、基本的に法改正などは行われておらず、罰条は変わっていません。しかし、未だ被害金額が増加傾向にあること、手口が巧妙になったり組織的に行われていること、一部は反社会的勢力の資金源になっていることなどを踏まえ、裁判で裁判官は厳しい刑事罰を科す傾向にあります。

たとえ初犯であっても、検挙されるまでに起こした事件の回数や被害金額次第では、前科前歴がない場合でも実刑判決に処されるおそれがあります。

特殊詐欺で弁護士に相談

特殊詐欺事件の場合、多くの加害者は事件の全体像を知りません。しかし、事件には多くの被疑者が関与していて、捜査機関も他の被疑者やそれぞれの役割・認識について慎重かつ入念に調べを進めていきます。そのため、特殊詐欺事件に関与した場合、逮捕・勾留されるのはもちろんのこと、長期間身柄拘束される・接見禁止により家族も面会できない・保釈も認められにくい・実兄になりやすい、といった様々な不利益が科せられます。

ご家族が特殊詐欺事件に関与してしまい詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪、窃盗罪で逮捕された場合、すぐに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の弁護士による初回接見サービス(有料)をご利用ください。

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