他人に体液をかけたという架空の事例について検討―神奈川県横浜市の刑事事件・少年事件を扱う弁護士事務所
神奈川県横浜市西区にて、他人に体液をかけた嫌疑で逮捕されたという事架空の事例を想定し、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が検討します。
【ケース】
神奈川県横浜市西区在住のAさんは、横浜市西区の会社に勤め会社員です。
Aさんは自身の体液をフィルムキャップに入れ、神奈川県横浜市西区の観光地にて観光中の客に対してフィルムキャップに入れていた体液をかけるという行為を繰り返し起こしていました。
複数件の通報を受けていた神奈川県横浜市西区を管轄する戸部警察署の警察官は、捜査の結果Aさんによる犯行の可能性が高いとして、Aさんを逮捕しました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【体液をかけて問題となる罪―器物損壊罪】
事例でAさんが行った体液をかけるという事件で成立しうる犯罪の1つが、器物損壊罪です。
刑法第261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
器物損壊罪の条文の「他人の物を損壊し」というのは、器物損壊罪の「損壊」とは、広く物本来の効用を失わせしめる行為を含むとされています。
文字どおり被害品を物理的に破壊してしまうことはもちろんのこと、「(心理的な意味合いも含め)被害品を使えないだろう」という状態にしてしまうことも器物損壊罪の「損壊」に当たるのです。
例えば飲食店にて陶器の食器を意図的に床に叩きつけて割る行為は当然に器物損壊罪に該当しますが、それだけではなく、判例は食器に放尿する行為についても器物損壊罪は成立するとされています(大判明42・4・16)。
これについて、放尿されただけであれば食器自体が物理的に壊れて使えなくなるわけではありませんが、他人が放尿した食器を再び食器として使おうと思える人は少ないでしょう。
そうすると、その食器は「食器」としての効用が失われてしまうと評価され、器物損壊罪のいう「損壊」に当たるということになります。
この「損壊」の意味を考えてみると、今回のAさんの事例で、AさんはVさんの顔や衣服に自身の体液をかけており、その行為がVさんの持ち物を物理的に壊したというわけではありません。
しかし、所有者であるVさんからすれば、他人の体液をかけられた衣服やカバンなどをまた使おうという気にはならないでしょう。
そうなると、AさんがVさんの衣服などの効用を失わせしめる行為をした=器物損壊罪が成立すると考えられるのです。
【体液をかけて問題となる罪―暴行罪】
Aさんがかけた体液がVさんの所持品や衣服ではなくVさんの身体にかかった場合には、暴行罪が成立する可能性があります。
刑法208条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
暴行罪の「暴行」とは、他人の身体に対して不法な有形力の行使をすることを指します。
一般によくイメージされる、他人を殴ったり蹴ったりして直接的に暴力を振るうことももちろん暴行罪の「暴行」に当たります。
これに加えて、他人の身体に直接触れなくとも他人の身体に向けて不法な有形力の行使があればよいことから、例えば他人の身体に物を投げつけたりするような行為も暴行罪の「暴行」となりえます。
過去の裁判例では、他人に塩を数回振りかけたという行為が暴行罪に問われたケースで、「刑法第208条の暴行は、人の身体に対する不当な有形力の行使を言うものであるが、右の有形力の行使は、所論のように、必ずしもその性質上傷害の結果発生に至ることを要するものではなく、相手方において受忍すべきいわれのない、単に不快嫌悪の情を催させる行為といえどもこれに該当するものと解すべき」とされ、塩を他人に振りかける行為が暴行罪の「暴行」に当たるとされました(福岡高判昭和46.10.11)。
他人に体液をかけるという行為は、不法な有形力の行使と評価される可能性があり、暴行罪が成立することが考えられます。
【事務所紹介】
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では、これまでに数多くの刑事事件・少年事件の弁護活動を行ってきました。
ケースのように、他人に体液をかけるという事件は少なからず実在します。
今回のケースの事件について考えると、被害者への示談交渉に加え、性犯罪を専門とする医療機関等を紹介し再犯に走らないための対策を講じる必要があります。
神奈川県横浜市西区にて、他人に体液をかけるなどして暴行罪や器物損壊罪に問われている方、家族がそれらの嫌疑で逮捕されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご連絡ください。