体液をかけて逮捕①器物損壊罪

体液をかけて逮捕①器物損壊罪

体液をかけて逮捕された事件で、特に器物損壊罪に問われる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。

【事例】

神奈川県横浜市泉区在住のAは、横浜市泉区にある会社に勤める会社員です。
Aは仕事のストレスが溜まり、それを解消する目的で横浜市泉区の路上にて、歩いていた女性Vの顔や衣服に、容器に入れた自身の体液をいきなりかけました。
Vが驚き悲鳴をあげたことから、Aはその場から逃走しましたが、通報を受けて駆けつけた神奈川県泉警察署の警察官が捜査を開始しました。
神奈川県泉警察署警察官による捜査の結果、AのDNAが採取された体液のものと一致し、Aは神奈川県泉警察署に器物損壊罪で逮捕されました。
(※事例は令和2年4月14日付・YAHOO!ニュース配信記事を基にしたフィクションです。)

【体液をかけて器物損壊罪?】

事例でAが行った体液をかけるという事件で成立しうる犯罪の1つが、器物損壊罪です。
今回の事例の基となった事件でも、逮捕容疑は器物損壊罪となっています。

刑法第261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪という犯罪名と体液をかけるという行為がなかなか一致しない方もいらっしゃることでしょう。
器物損壊罪の条文の「他人の物を損壊し」という言葉からは、物を壊した時に成立するように見えます。
しかし、実は器物損壊罪の「他人の物を損壊し」という条文中にある「損壊」とは、物理的に物を破壊することのみを指しているわけではありません。

一般に、器物損壊罪の「損壊」とは、広く物本来の効用を失わせしめる行為を含むものをされています。
先程触れたような、物自体を物理的に破壊してしまうことはもちろん、「その物を使えないだろう」という状態にしてしまうことも器物損壊罪の「損壊」に当たるのです。
例えば、花瓶を割ってしまうことは花瓶を使えなくしてしまう行為ですから、もちろん器物損壊罪の「損壊」となります。
そして、他人の食器に放尿するといった行為も器物損壊罪の「損壊」に当たります(大判明42・4・16)。
というのも、放尿されただけであれば、食器自体が物理的に壊れて使えなくなるわけではありませんが、他人が放尿した食器を再び食器として使おうと思える人は少ないでしょう。
となると、その食器は「食器」としての効用が失われてしまうわけですから、器物損壊罪のいう「損壊」にあたり得るのです。

この「損壊」の意味を考えてみると、今回のAの事例で器物損壊罪が成立することも納得できるのではないでしょうか。
AはVの顔や衣服に自身の体液をかけており、その行為がVの持ち物を物理的に壊したとはなりません。
しかし、所有者であるVからすれば、他人の体液をかけられた衣服などをまた着用しようとは思えないと考えることは自然なことでしょう。
そうなると、AがVの衣服などの効用を失わせしめる行為をした=器物損壊罪が成立すると考えられるのです。

【器物損壊罪と弁護活動】

器物損壊罪は、「親告罪」と言われる、「告訴」がなければ起訴できない犯罪です。
「告訴」とは、被害者などの告訴権者が、犯罪被害にあったことの申告をすることと犯人の処罰を求めることです(犯罪被害にあったことの申告のみの場合は「被害届(の提出)」にとどまります。)。
つまり、起訴される前に告訴を取り下げてもらったり告訴をしない約束をしてもらったりできれば、不起訴処分となることになります。
不起訴となれば刑罰を受けることも前科がつくこともないため、器物損壊事件では謝罪・弁償をして示談を締結していくことを目指す弁護活動が考えられます。

しかし、特に今回のAのような器物損壊事件では、被害者が直接犯人やその関係者とコンタクトを取ることは考えづらいです。
性犯罪的な側面もあることから、処罰感情や恐怖も強いと考えられるためです。
だからこそ、弁護士という立場の第三者を介しての謝罪・弁償の交渉を進めることが有効と考えられるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部では、器物損壊罪などの刑事事件を専門としています。
逮捕されている方向けの初回接見サービスも、逮捕直後からご利用いただけます。
神奈川県横浜市泉区にて、ご自身やご家族の方が体液をかけて器物損壊事件の被疑者になってしまったという場合、まずはお気軽に当事務所までご連絡ください。

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