不作為犯の逮捕
◇事例◇
神奈川県横須賀市在住のAさんは、兄弟はおらず父親も亡くしており一人実家で90歳の母親の介護をしていました。
Aさんは、日々の介護のストレスや、いつでも動けるように気を張っておりだんだんとノイローゼになりました。
そして、頼れる人が誰もいなかったAさんは、母親が何も食べずに死んでくれればいいのにと思い、一人で旅行に行きました。
母親を置いたまま旅行していたAさんは、不意に母親が心配になり自宅に戻りました。
すると母親は亡くなってしまっていました。
Aさんは、この行為が殺人罪にあたるのか心配になり、刑事事件に強い弁護士に相談しました。
(事実をもとにしたフィクションです。)
◇殺人罪◇
~刑法 199条~
人を殺した者は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
殺人罪のいう「殺す」とは,他人の生命を断絶することです。
殺害の方法には、撲殺,刺殺,絞殺などの物理的な方法だけでなく,精神的な傷害を与えて死亡させるなどの心理的な方法によるものまで,多岐にわたって認められます。
心理的な方法とは,強度の心臓疾患を抱えている人に,強い精神的ショックを与えて殺害するような場合のことも含みます。
このように積極的に行為を行うことは「作為」と言われます。
◇不作為犯◇
一方、不作為とは自ら進んで積極的な行為をしないということです。
ここでの不作為は、するべき行為をしないことを指します。
つまり、不作為犯とはするべきことをしないことによって他人に被害をもたらした人のことをいいます。
不作為犯には真正不作為犯と不真正不作為犯の2種類があります。
真正不作為犯とは、構成要件的行為が、不作為の形式で刑法に定められている犯罪を行った人のことです。
つまり「するべきことをしなかった者は罰せられる」と定められた犯罪のことです。
例えば、不退去罪や保護責任者不保護罪などがあたります。
不真正不作為犯とは、構成要件的行為が作為の形式で定められている犯罪を、不作為により犯してしまった人のことです。
条文自体は不作為の場合をのぞいていないこと、不作為であっても作為と同様な危険性悪質性を有する場合作為と同様に処罰するべきである、ということから、不真正不作為犯であっても処罰されえます。
もっとも、不真正不作為犯は、条文上どのような不作為が処罰の対象なるのかが不明確です。
道徳的に助けるべきだからといって、助けなかった人を全て処罰するわけにはいきません。
なので、不真正不作為犯として処罰するには、慎重な判断が必要となります。
一般的に下記のような条件が必要であると考えられています。
不作為が義務違反になる「作為義務」があること。
作為を行うことが出来ることの「作為可能性」があること。
不作為が構成要件に実行行為として規定された作為と法的に同価値のものであること。
◇今回の事例について◇
今回の事例は、Aさんが介護を放棄したことにより、母親がなくなってしまったものであり、Aさんが保護責任者不保護致死(刑法219条・218条後段)又は不作為の保護責任者遺棄致死(刑法219条・218条前段)となるのか、より重い殺人の不真正不作為犯となるかどうかが問題となります。
そこでAさんに「作為義務」があり「作為可能性」あり、Aさんの「不作為が構成要件に規定された実行行為と法的に同価値のもの」であるのかを検討していく必要があります。
母親は他人の助けがなければ生命の維持もおぼつかない状態だったのか、誰が母親を介護できたのか、単に放置したのか母親の生命がより確実に危機に陥る状況を作ったのか、などAさんの行ったことやしていないこと、Aさんの家族構成や心理状況など細かく見ていくことで、今回の行為が殺人罪を適用されるか考えていくことになるでしょう。
◇不作為犯の弁護活動◇
不真正不作為犯のための弁護活動としては、まず被疑者(容疑者)が前述のような不作為犯の成立条件に当てはまらないことを証明する必要があります。
そのためにも、事件が起きてすぐに弁護士に相談し、必要な証拠や情報を集められるかどうかが重要になってきます。
もちろん、証拠隠滅となるもしくは疑われるようなことは避けなければなりません。
また、不作為犯にあたるとなってしまった場合でも、自首や情状酌量をもとに刑を減軽できるかもしれません。
そのためにも刑事事件に強い弁護士を呼び、取調べにおいて不利な供述をしないようアドバイスを貰ったり、検察や裁判所に適切な要求をする必要があります。。
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初回法律相談:無料
神奈川県浦賀警察署までの初回接見料金:39,400円