偽造切符を使い逮捕
国土交通省職員が偽造した切符を使って逮捕されたという事件がありました。
【独自】鉄道局職員 偽造切符で乗車か 「青春18きっぷ」容疑認める
Yahoo!ニュース(フジテレビ)
この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
~偽造切符使用で成立する犯罪は?~
この事件は、鉄道事業者を指導・監督する立場の国土交通省鉄道局の職員が、偽造した「青春18きっぷ」を使って電車に乗った疑いで逮捕されたというものです。
乗車したJR石川町駅(神奈川県)では気付かれませんでしたが、降車した東京駅の改札で駅員に気付かれて逮捕されたということです。
上記職員は、偽造有価証券行使罪と詐欺未遂罪の疑いで逮捕されています。
まずは偽造有価証券行使罪の条文を見てみましょう。
刑法
第163条1項
偽造若しくは変造の有価証券又は虚偽の記入がある有価証券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
こちらが偽造有価証券行使罪の条文です。
有価証券とは、チケット・切符・金券・サービス券など、金銭的価値のある券などのことを言います。
偽造した青春18きっぷを使ったことは、「偽造…の有価証券…を行使」したということになるので、この犯罪が成立するわけです。
なお、その後の捜査で、逮捕された職員自身が切符を偽造したとみられているとのこと。
そうなると、有価証券偽造罪という別の犯罪も成立し、より重く処罰される可能性があります。
第162条1項
行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
今回逮捕された職員も、今後、有価証券偽造罪にも問われることになるでしょう。
~詐欺罪・詐欺未遂罪~
続いて、詐欺罪や詐欺未遂罪の条文を見てみましょう。
第246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2項
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
第250条
この章の罪の未遂は、罰する。
246条が詐欺罪の条文です。
中でも1項が、物やお金をだまし取った場合の条文で、2項は人をだまして財産的利益を得た場合の条文です。
今回の事件では、物やお金をだまし取ったのではなく、運賃の支払いを免れるという財産的利益が関係しているので、2項が問題となります。
そして、250条が未遂罪の規定です。
未遂の段階で処罰するかどうかは犯罪により異なりますが、詐欺・背任・恐喝など、刑法37章に規定されている犯罪は、未遂の段階で処罰されうることになります。
一般的には、未遂罪の方が処罰は軽くなります。
なお、今回は降車駅の改札で気が付かれたので、詐欺に成功していないということで詐欺未遂罪での逮捕となっています。
しかし、乗車駅で駅員を騙し、鉄道に乗って移動できたので、未遂ではなくすでに詐欺罪が成立しているという考え方もあり、裁判例が分かれています。
今回の事件でも、結局、詐欺罪で処罰を受ける可能性もあるでしょう。
~弁護士にご相談下さい~
逮捕された後の手続きの流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
あなたやご家族が、何らかの犯罪で突然逮捕されると、いったいどんな罪に問われているのか、いつ釈放されるのか、被害者との示談はできるのか、取調べではどう受け答えしたらよいのか、勤務先からの処分はどうなるのかなど、不安だらけだと思います。
今後の見通しをご説明させて頂きますので、まずはお早めに、弁護士にご相談いただければと思います。
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