傷害致死事件で正当防衛を主張
傷害致死事件の嫌疑をかけられているものの、正当防衛を主張する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市西区在住のAは、横浜市西区の会社に勤める会社員です。
Aは横浜市西区内の飲食店にて女性Xと食事をしていたところ、酒に酔ったVに絡まれました。
Aは無視を決め込みましたが、Vは「なに黙ってんだよ、喋らねえならその口裂いてやる」と言って、カウンターに置いてあったペティナイフを持ち出し、Aに対して振り回しました。
危険を感じたAは、Vに体当たりして床に倒し、Vを押さえつけました。
ところが、Aの暴れるVを押さえつける時間が長かったことから、Vは窒息死してしまいました。
戸部警察署の警察官は、Aを傷害致死罪で逮捕し、その後処分保留で釈放しましたが捜査は進めています。
釈放されたAは、自己の行為が正当防衛に当たるのではないかと考え、刑事事件を専門とする弁護士に無料相談をしました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【傷害致死事件について】
人が何かしらの形で相手を死亡させた場合に適用される罪については、その態様によっていくつかに分かれます。
まず、その行為が故意か過失に分けられます。
過失の場合には、過失致死罪や業務上過失致死罪、過失運転致死罪などが適用されます。
一方で故意犯の場合には、傷害致死罪や殺人罪が考えられます。
殺人罪は刑法199条で「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する」と定められています。
傷害致死罪は刑法205条で「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。」と定められています。
両者は相手を傷つけて殺すという点で共通していますが、刑法は「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。」と定められているため(刑法38条1項)殺人罪は「人を殺す」意思がなければ成立しません。
その為、ケースのように相手を押さえつける意思があるものの相手を殺す意思がない場合については、殺人罪ではなく傷害致死罪の適用が検討されます。
【正当防衛について】
では、ケースのAが必ずしも傷害致死罪で有罪の判決を受けることになるのかと言うと、その前にもう一点検討するべき問題があります。
それが正当防衛です。
正当防衛は、刑法36条1項で「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」と定められています。
「急迫」とは、法益の侵害が玄以存在しているか、又は間近に迫っていることを指します。
ケースについて言うと、Aは何もしなければVにナイフで刺される可能性があることから、「自己の権利=生命」となります。
そして、AがVを押さえつける行為が「(その)権利を防衛するためにやむを得ずした行為」と評価された場合、Aの行為は正当防衛に当たり、違法性を否定され、罪に問われないこととなります。
ただし、例えばVが無抵抗だったにもかかわらず床に押し付けられ続けた場合や、Vがナイフを持っていないのにAがナイフでVを切り付けた場合等には過剰防衛(刑法36条2項)が適用される場合や正当防衛・過剰防衛ともに認められない場合もあります。
神奈川県横浜市西区にて、相手がナイフを持ち出して自分に襲い掛かろうとした場合等に自分を守るために反撃した結果、相手が死亡した傷害致死事件の場合に、正当防衛が問えるのかが分からないという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部までご連絡ください。
刑事事件専門の弁護士が、正当防衛を主張する余地があるか否か、ご説明致します。