神奈川県川崎市中原区の器物損壊事件
器物損壊罪はどのような罪か、故意なく物を壊した場合にはどうなるか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県川崎市中原区在住のAは、川崎市中原区にある会社に勤める会社員です。
Aは最近になって川崎市中原区に引っ越してきたのですが、以前から近所に住んでいたVから時として因縁をつけられていました。
Aとしては特に気にしていなかったのですが、Vからは「家の生活音がうるさい」などとしばしクレームを受けていました。
ある日、Aが自宅近くの公園でゴルフクラブをもってゴルフの素振りをしていたところ、手が滑ってしまいゴルフクラブが飛んでいき、Vの自宅前に止まっていた自動車にあたりフロントガラスが割れてしまいました。
Vは、Aが自分に対して逆恨みしたことでゴルフクラブを自宅に投げつけてきたのだと主張し、それを川崎市中原区を管轄する中原警察署の生活安全課に対し、Aによる器物損壊事件の告訴状を提出すると言われました。
Aは、このような事件で器物損壊罪が成立するのか、刑事事件専門の弁護士に無料相談しました。
(ケースはすべてフィクションです。)
【器物損壊事件について】
物を壊した場合に成立する罪については、刑法第40章の「毀棄及び隠匿の罪」の規定が問題となる可能性が高いです。
毀棄及び隠匿の罪には、公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊及び同致死傷罪、器物損壊等罪、自己の物の損壊等罪、境界損壊罪、信書隠匿罪が規定されています。
このうち、書類と建物以外の物を壊す行為については器物損壊罪が適用される可能性があります。
器物損壊罪の条文は下記のとおりです。
刑法261条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役または三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
損壊とは、「物質的に物の全部、一部を害し、又は、物の本来の効用を失わしめる行為をいう」と言われています。
また、傷害とは、動物などに対してけがを負わせたり殺したりする行為が考えられます。
(ペットを家族同様にかわいがっておられる方も多くおられることと思いますが、法的には動物は「物」と評価されます。そのため、他人のペットを殺しても殺人罪や傷害罪などは適用されません。)
しかし、器物損壊罪に限らず、刑法では故意犯処罰の原則が採用されています。
故意犯処罰の原則については、刑法38条1項で「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と定められています。
特別の規定とは、例えば業務上の過失で人を死傷させた場合(つまり、故意ではないものの不注意に人を怪我させたり死亡させたりした場合)に適用される業務上過失致死傷罪などがあります。
つまり、過失によって物を壊した場合には、器物損壊罪は適用されず、刑事上の責任を負うことはありません。
※自動車の運転中の過失で建造物を壊した場合などには、道路交通法が適用されて刑事上の責任を問われる場合があります。(道路交通法116条 運転過失建造物損壊罪)
【故意を否認して弁護士へ】
ケースの場合、手を滑らせたことによってゴルフクラブが飛んで行ってしまい、その結果Vが所有する自動車のフロントガラスを破壊しているため、器物損壊罪は適用されません。
よって、Vが器物損壊罪での告訴状を提出した場合に警察署はそれを受理しないと考えられます。
ただし、以前から近隣トラブルがあることなどから「Aが故意にVの車に向かってゴルフクラブを投げつけた可能性がある」と判断された場合には、器物損壊罪の捜査が行われる可能性があります。
よってAは、警察署をはじめとする捜査機関に対し、Vの物を壊す意思がなかったということを主張する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
神奈川県川崎市中原区にて、過失により物を壊してしまったにもかかわらず器物損壊罪の嫌疑をかけられる可能性がある方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士による無料相談をご利用ください。