窃盗罪と遺失物横領罪の違い

窃盗罪と遺失物横領罪の違い

刑法の微妙な違いは、具体的なケースを検討することで明らかになります。本記事では、他人の落とした物を見つけて所有する行為が、どのように法律によって解釈され、正直な間違いと犯罪行為を区別する状況について探求します。

法的枠組み

日本の刑法には、他人の財物を不正に取得する行為を罰するための複数の条文が存在します。
窃盗罪(刑法235条)は、他人の財物を盗んだ者を処罰するもので、最大で10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
一方、遺失物横領罪(刑法254条)は、他人の落とした物や所有者のいない物を横領した者に対し、1年以下の懲役または10万円以下の罰金若しくは科料で処罰されることを定めています。

これら二つの罪は、行為の性質と被害物の状況によって区別されます。
窃盗は他人の占有下にある財物をひそかに取る行為を指し、遺失物横領は誰の占有下にもない財物を取る行為が対象となります。
法律の専門家は、具体的なケースにおいてこれらの罪の適用を慎重に判断する必要があります。

事例を想定して検討

神奈川県厚木市に住むAさんは、ある日、厚木市内にある商業施設内のベンチに財布が置いてあるのを見つけました。
財布の中には現金1万円が入っており、Aさんはその現金をこっそりと自分のものにし、財布は施設のスタッフに届けました。
しかし、半年後に警察から連絡があり、Aさんは窃盗罪で捜査を受けることになりました。

この事例では、財布を見つけたAさんが直面した法的な問題が浮き彫りになります。
財布を届けた行為は善意に見えますが、中の現金を取った行為は法的にはどうなのでしょうか。
このケースは、窃盗罪と遺失物横領罪の境界を探る上で興味深い事例と言えます。

窃盗の問題

窃盗罪は、他人の占有下にある財物を秘密裏に持ち去る行為を指します。
この犯罪の成立には、「不法領得の意思」という他人の財物を自己のものとする意思が必要です。
今回想定している事例では考えられませんが、例えば、ゴルフ場でコンペに参加したような場合に、自分のものに酷似したクラブがあり自分のものだと誤信して自宅に持ち帰ったような場合には、不法領得の意思がないとして窃盗罪は成立しません。

次に、法律は、財物を見つけた場所や状況によって、窃盗と横領を区別します。
施設内で見つかった財布の場合、その施設が管理する財物とみなされることが多く、管理者の占有の意思に反して持ち去る行為は窃盗として扱われることがあります。
Aさんのケースでは、施設内で財布を見つけたにも関わらず、現金を取ったことが窃盗罪の適用を受ける根拠となりました。

横領:見つけたからといって所有できない

遺失物横領罪は、他人の占有かにない言わば落し物を持ち去る行為が該当します。
この罪には「占有の意思」という、見つけた物を自分の物として扱う意思が必要です。よって、例えば家の門の前にハロウィンのモニュメントを飾っていたとしても、それは意図して門の前に置いているわけであり、所有者の占有下である(支配が及んでいる)ことになるため、遺失物横領罪は成立しません。他方で、公園のベンチに財布を置いたまま家に帰ってしまった場合などであれば、その財布は所有者の支配下にはなく、占有が及んでいないと考えられるため、遺失物横領罪が成立すると考えられます。

遺失物横領罪の適用は、窃盗罪と比較して軽微な罪に分類されますが、適切な対応を行わなければ刑事手続きに従って罰金刑などの前科がつく恐れがあることに変わりありません。
法律は、遺失物を適切に届け出ることを義務付けており、見つけた物を自分のものにしてはならないと定めています。
Aさんのケースでは、正直に届け出たように見せかけながら、実際には遺失物を横領したという点で、より悪質と判断されると考えられます。

捜査と法的手続き

窃盗罪や遺失物横領罪の疑いがある場合、警察は捜査を開始します。
捜査の過程で、警察は目撃者の証言や監視カメラの映像、指紋などの物的証拠を収集し、犯罪の有無を判断します。
Aさんのケースでは、監視カメラが決定的な証拠となりました。

法的手続きにおいては、一般的に被害者が被害届を提出することで捜査が開始されます。(捜査の端緒)
この段階で、疑われる人物は弁護士に弁護を依頼する権利があり、法的なアドバイスを受けることができます。その際、逮捕されているか在宅で捜査を受けているかという点で違いはありません。
捜査が終了し、犯罪があったと判断されれば、検察官は起訴を決定し、裁判所での審理が始まります。
このプロセスは、被疑者にとっても、被害者にとっても、公正な裁判を保証するために重要です。

被告人の弁護

刑事訴訟において被告人が取り得る弁護の戦略は多岐にわたります。
例えば、Aさんのようなケースでは、Aさん自身は財布を届けただけであり、その前後でAさん以外の人が財布の中身を抜き取った、と主張することが考えられます。
また、今回のケースでは当てはまりませんが、「遺失物を届ける意図があったが警察署が見つからず、後日届けるつもりだった」という事実を証明することで、遺失物横領の意図を否定する事例もあります。

弁護士は、被疑者・被告人の行動背景や心理状態、そして法的な解釈の余地を検討し、最も有利な弁護を構築します。
Aさんの場合、財布を届けた行為が善意に基づくものであったとする主張が、弁護の中心となり得ます。
しかし、証拠が強固である場合、弁護戦略はより複雑なものとなり、時には和解や司法取引が検討されることもあります。

刑事事件の弁護は、単に法律的な知識に基づくだけでなく、人間心理や倫理的な問題をも考慮に入れる必要があります。
それにより、法廷での公正な審理が期待されるのです。

弁護士に依頼し示談交渉

仮にAさんが罪を認めて反省し、被害者に謝罪と賠償をしたいと考えた場合、示談交渉を行うことになります。まず前提として、示談交渉そのものは、当事者間(加害者と被害者)で行うことが可能です。しかし、ケースのような窃盗罪や遺失物横領罪の場合は加害者が被害者の連絡先を知っている場合は稀であり、仮に連絡先を知っていたとしても無用なトラブルを招いたり適切な示談書の作成が臨めなかったりと、懸念材料が多々あります。そのため、弁護士に弁護を依頼して示談交渉を進めることをお勧めします。

神奈川県横浜市や近隣の川崎市、多摩市、相模原市、小田原市などで、他人の落し物を持ち去る行為により窃盗罪や遺失物横領罪に問われているという場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の弁護士による無料法律相談をご利用ください。

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