不同意性交等罪(旧強制性交等罪)・監護者性交等罪
不同意性交等(強制性等)罪
16歳以上の者に対し、刑法第176条第1項各号に該当し、性交、肛門性交又は口腔性交、膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く)若しくは物を挿入する行為であって、わいせつなもの(以下「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず不同意性交等(旧強制性交等)の罪とし、5年以上の有期拘禁刑に処する(刑法第177条第1項)。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も処罰されます(同条第2項)。
16歳未満の者に対し、性交等をした者も、原則、同様とする(同条第3項)。
不同意性交等(旧強制性交等)罪における暴行・脅迫は、反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫のことをいうとされています。
以前の強姦罪規定においては、男性の女性に対する姦淫行為のみが処罰の対象とされていました。姦淫とは、性交のことをいい、男性器の女性器への一部挿入により既遂となります。しかし、平成29年の刑法改正により、肛門性交や口腔性交も処罰の対象となり、女性も加害者に、また、男性も被害者になり得ることとなりました。さらに、膣又は肛門に陰茎以外の身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものも性交等に含まれることとなりました。
準強制性交等罪(旧 準強姦罪)(刑法178条)
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監護者性交等罪
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条第1項の例による(刑法第179条2項)。
平成29年の刑法改正により、監護者性交等罪という罪が新設されました。これにより、親子等の監護者・被監護者の間で行われた性交等について、暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の事実が認められない場合でも、地位や関係性を利用して被害者の意思に反して行われたといえるもの(刑法第177条第1項)に関しては、本条の適用が可能となりました。
未遂罪
不同意性交等罪(旧強制性交等罪)・監護者性交等罪は、未遂であっても罰せられます(刑法第180条)。
不同意性交等致死傷罪(旧強制性交等致死傷罪)
第177条若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する(刑法第181条第2項)。
親告罪について
平成29年の刑法改正前は、旧強姦罪・準強姦罪(未遂も含みます。)は、親告罪でした。親告罪とは、被害者その他一定の人の告訴がなければ検察官が起訴することができない犯罪のことをいいます。
しかし、平成29年の刑法改正により、不同意性交等罪(旧強制性交等罪)・監護者性交等罪は、いずれも親告罪ではなくなりました。今後は、被害者等による告訴がなくても起訴が可能となります。
もっとも、起訴するためには被害者の捜査協力が通常必要不可欠であることや、被害者のプライバシー等に配慮する観点等から、やはり被害者等による告訴の有無は、起訴・不起訴の判断に今後も非常に大きな影響を与えるものと考えられます。不同意性交等(旧強制性交等)事件においては、被害者側と示談・和解が成立し、告訴がされない、あるいは取り下げられるとなると、不起訴処分として裁判にならず、前科が付くこともない、という可能性が十分にあります。
事例
Aさんは、妻のBさんに性交渉をするよう求めたものの、強く拒否されてしまいました。
そこで、Aさんは、Bさんの手を押さえるなど力ずくでBさんの抵抗を抑圧し、性交渉を行いました。
このような場合、Aさんは不同意性交等罪(旧強制性交等罪)に問われるのでしょうか?
(解説)
令和5年の改正により、不同意性交等罪には「婚姻関係の有無にかかわらず」との文言が加わり(刑法第177条第1項)、Aさんは不同意性交等罪に問われることになります。
不同意性交等罪(旧強制性交等罪)・監護者性交等罪における弁護活動
示談交渉
前述のとおり、強制性交等罪・準強制性交等罪・監護者性交等罪はいずれも、親告罪ではなくなっています。被害者等による告訴がなくても起訴が可能です。
しかし、起訴するための充分な証拠を収集するためにも、また、起訴後の裁判で有罪認定を導くためにも、通常被害者の捜査協力が不可欠です。告訴がなされないような場合、被害者の捜査協力姿勢が非常に消極的であることが想定されます。すると、現実問題として、起訴やその後の公判における有罪立証が厳しいものとなります。
また、従前強姦罪等が親告罪とされていたのは、被害者のプライバシーへの配慮というところが大きかったのです。被害者のプライバシー保護の重要性については、平成29年の刑法改正前後でなんら変わるところはありません。
そうすると、今後も、強制性交等罪等については、やはり被害者等による告訴の有無が事件の結論を大きく左右することは間違いないと考えられます。強制性交等罪等事件においては、被害者との間で示談・和解を成立させ、告訴の回避・告訴の取り下げを目指す弁護活動が非常に重要になってくるのです。なお、起訴されてしまった後でも、示談の成立は、有利な情状として考慮され、減刑や執行猶予付きの判決を得られる可能性を高めます。さらに、示談が成立することで、身体拘束から解放される可能性も上がります。
このように、被害者との示談は非常に有効ですが、不同意性交等罪(旧強制性交等罪等)の事件の場合は特に、被害者が加害者に対して強い拒絶感や処罰感情を有していることがほとんどです。
中には、絶対に示談などしないという被害者の方もいらっしゃるかもしれません。
事件の性質上、加害者が直接被害者と交渉をして、逆効果となるおそれがあることは容易に想像できるでしょう。
まずは誠心誠意、謝罪の意を表すことが大切ですが、交渉に当たっては被害者の気持ちや立場に立って、十分な配慮のもと行われるべきです。
示談交渉に関しては、刑事事件を専門的に取り扱い、示談交渉の経験豊富な弁護士にお任せすることをおすすめします。
再発防止と環境改善
過去に強姦・不同意性交等罪(旧強制性交等罪)の事件を起こした方は、自分のした行為を恥じ、深い後悔をしていたにもかかわらず、再犯に走ってしまう場合があります。
繰り返し性犯罪で捕まった場合、反省や更生がされていないとして、重い処分がなされる可能性が高まります。
しかし、そのような常習者の中にも、性犯罪行為を辞めたいと思いながら、自らをコントロールできずに繰り返してしまう方がいます。
このような場合には、医療機関などの専門機関への受診と治療などを行い、根本からの改善を試みるように促します。
無罪の主張
実際には性行為をしていない、あるいは同意の上での性行為であった、その時の状況から同意があると信じたなどの、不同意性交等罪(旧強制性交等罪等)が成立しないにもかかわらず、捜査対象となり、取調べや逮捕が行われる場合があります。
そのような場合、弁護士は、捜査機関に対して不同意性交等罪(旧強制性交等罪)不同意性交等罪等の成立を否定する客観的な証拠に基づく主張をしたり、捜査機関の見解が十分な証拠に基づくものではないことを主張したりして、不起訴処分・無罪判決を目指します。
また、依頼者の方に対しては取調べ対応などについての的確なアドバイスをして、不利な調書を作られてしまわないようにします。
身柄解放活動
一般的に、不同意性交等罪(旧強制性交等罪)・監護者性交等罪事件で逮捕されると、その後の身柄解放には困難が伴います。
しかし、早期の身柄解放を実現できなければ、それだけ元の生活を取り戻すことが困難になりますし、被疑者・被告人の方やそのご家族の苦労も増えてしまうでしょう。
そこで弁護士は、証拠隠滅や逃亡の可能性がない、釈放・保釈される必要があるなどの事情を証拠に基づき主張し、検察官や裁判官に積極的に働きかけることで、釈放・保釈を勝ち取り身柄拘束が長期化しないように尽力します。
不同意性交等罪(旧強制性交等罪)等の事件でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の弁護士に一度ご相談ください。
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