交通違反における交通反則通告制度と刑事罰
軽微な交通違反であっても、刑事罰は定められていますが、軽微な違反については、交通反則通告制度というものがあります。
交通反則通告制度とは、交通違反後、反則金を納付することによって、刑事罰が免除される制度です。この場合、前科はつきません。
しかし、無免許運転や飲酒運転、スピード違反のうち超過速度が時速30km以上(高速道路では時速40㎞以上)のものなど、危険性が高かったり悪質な違反については、交通反則通告制度が適用されません。
このような場合には、刑事罰による刑事責任に問われることとなります。
赤切符が切られて罰金を支払ったという話がありますが、赤切符による罰金は、略式罰金という刑事罰であり前科が付きます。
なお、交通違反をすれば免許の点数が加算され、点数に応じて免許の停止や取消しといった処分がされることがありますが、これらは全て刑事罰ではなく、行政上の処分です。
無免許運転の禁止
運転免許を取得していない場合だけでなく、運転免許停止中や運転免許取消後・失効後に運転した場合も、無免許運転に含まれます。
平成25年の道路交通法改正により、無免許運転を助長する車両提供者や同乗者に対する罰則も新設されました。
無免許運転をした場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2)に処せられます。
初犯で事実を認めているような場合には、正式裁判ではなく略式手続での罰金で済むことも多くあります。
しかし、日常的に、長期間、無免許運転をしていた場合などは、正式裁判となり懲役刑に問われるリスクもあります。
さらに、同種の前科や前歴がありながら、無免許運転を常習的に繰り返しているような悪質性の高い事案では、執行猶予の付かない実刑判決を言い渡されるリスクもあります。
また、無免許運転をして人身事故を起こした場合、免許ありで人身事故を起こした場合と比べて刑事罰が重くなるものがあり、具体的には以下の表のとおりです。
罪名 | 結果 | 刑罰・法定刑 | |
無免許運転以外の場合 | 無免許運転の場合(6条) | ||
危険運転致死傷罪 (※)(2条) |
死亡 | 1年以上の有期懲役 (最高20年) |
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負傷 | 15年以下の懲役 | 6月以上の有期懲役(1項) (最高20年) |
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準危険運転致死傷罪 (3条) アルコール・薬物・病気 |
死亡 | 15年以下の懲役 | 6月以上の有期懲役 (最高20年) |
負傷 | 12年以下の懲役 | 15年以下の懲役(2項) | |
発覚免脱罪(4条) | 死亡・負傷 | 12年以下の懲役 | 15年以下の懲役(3項) |
過失運転死傷罪(5条) | 死亡・負傷 | 7年以下の懲役、禁錮 又は100万円以下の罰金 |
10年以下の懲役(4項) |
なお、近時、「無免許運転をする恐れがある者に対して自動車やバイクを提供する行為」(車両提供罪)、「無免許の人に運転を要求若しくは依頼して同乗する行為」(要求・依頼同乗罪)が処罰の対象として新たに追加されました。
車両提供罪には「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(道路交通法第117条の2の2第2号)が科されます。
要求・依頼同乗罪は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」(道路交通法第117条の3の2第1号)が課されます。
法定速度違反
道路標識等により指定されている最高速度や、標識等が無い場合は政令で定める最高速度を超える速度で走行した場合には、6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金と定められています(道路交通法118条第1号、22条)。
スピード違反のうち、一般道路では時速30㎞以上、高速道路で時速40㎞以上法定速度をオーバーした場合は、上で述べた交通反則通告制度は適用されず、刑事手続となって刑事罰が科されることとなります。
多くの場合は、略式手続による罰金処分となりますが、超過した速度が極めて高い場合や、過去に複数の同種前科があるような場合には、正式裁判となり懲役刑に問われる可能性もあります。
無免許運転・スピード違反事件における弁護活動
情状弁護
無免許運転やスピード違反の事実に間違いない場合は、できる限り略式罰金や執行猶予付き判決などの寛大な処分となるよう、弁護活動を行うことになります。
具体的には、無免許運転やスピード違反の経緯、動機、態様、回数、頻度、同種前科前歴の有無などを精査して、情状として酌むべき事情を積極的に検察官や裁判官に対して主張していきます。
特に交通事犯では、二度と違反を繰り返さないように、自分の犯した行為がどれほど危険なものなのか、しっかりと向き合い、交通ルールを順守する意識を本人自身が高めることが大切です。
複数の同種前科があり、重い処分が見込まれるような場合にでも、通勤や通学に自動車を使用する必要がない環境を整えたり、場合によっては自動車を処分することなども視野に入れ、それらの事情を情状酌量の事情としてアピールし、執行猶予付判決を狙っていきます。
無罪主張
スピード違反で検挙されたが、警察官の速度測定に疑わしいところがあったり、スピード違反の覚えがないというような場合は、警察官の検挙の仕方に問題があったことや、速度測定器の誤作動や不備、操作不良の可能性があることを、証拠を精査した上で主張する弁護活動をします。。
捜査機関による証拠が不十分である場合は、嫌疑不十分による不起訴処分を得られる場合がありますし、起訴されてしまった場合は、正式裁判で争って無罪判決の獲得を目指します。
早期の身柄解放
一般に、無免許運転やスピード違反事件については、在宅のまま捜査が進むことが多く、逮捕されて身柄を拘束されるような場合は少ないといえます。
しかし、証拠隠滅や逃亡をすると疑われた場合には、逮捕や勾留がなされる可能性もないとはいえません。
そのような場合であっても、検察官や裁判所に働きかけを行うことにより、早期の身柄の開放を目指します。
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