虚偽書き込みの名誉毀損事件
虚偽書き込みの名誉毀損事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,SNS(会員制交流サイト)において,特定の警察官を騙って,Vさんが法律違反をしているとの虚偽の内容を書き込み,Vさんの名誉を傷つけたとして,神奈川県宮前警察署の警察官により名誉毀損罪の容疑で捜査を受けています。
Aさんは,神奈川県宮前警察署の警察官により名誉毀損事件の捜査を受け,事の重大さに気が付き,名誉毀損事件に強い刑事弁護士をつけることを考えています。
(2021年4月20日に静岡新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【名誉毀損罪とは】
刑法230条1項
公然と事実を摘示し,人の名誉を毀損した者は,その事実の有無にかかわらず,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
名誉毀損罪は,「人の名誉」を保護するために規定された犯罪です。
具体的に名誉毀損罪の「人の名誉」とは,人に対する積極的な社会評価(外部的名誉)といいます。
名誉毀損罪の保護法益がこの人に対する積極的な社会評価(外部的名誉)であることから,名誉毀損罪が成立するための要件として「公然と」事実を摘示することが要求されています。
これは,名誉毀損罪の「公然と」とは,摘示された事実を不特定または多数人が認識しうる状態のことをいいますが,不特定または多数人への事実の摘示であれば人に対する積極的な社会評価(外部的名誉)が毀損されると類型的に考えられるからです。
また,名誉毀損罪の「事実を摘示」とは,人の社会的評価を低下させるのに足りる具体的な事実を摘示することをいいます。
この名誉毀損罪の摘示された事実は,真実であるか偽りであるかを問わないと考えられています。
なお,この名誉毀損罪の「事実を摘示」という要件を満たさない場合,名誉毀損罪は成立しませんが,侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。
さらに,名誉毀損罪は,以上のように公然と事実を摘示することにより,「人の名誉を毀損した」場合に成立すると規定されていますが,被害者の方の社会的評価を低下させるに足りる事実を公然と摘示すればよく,現実に名誉が毀損される必要はないと考えられています。
【名誉毀損罪が成立しない場合とは】
刑法230条の2
前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には,事実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰しない(第1項)。
前項の規定の適用については,公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は,公共の利害に関する事実とみなす(第2項)。
前条1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には,事実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰しない(第3項)。
名誉毀損罪に関する特則として刑法230条の2が規定されています。
この名誉毀損罪に関する特則規定は,一定の要件が満たされる場合,特に表現の自由を保障する観点から名誉毀損罪を「罰しない」とされています。
具体的には,刑法230条の名誉毀損罪に該当する行為が①公共の利害に関する事実に係るものであり,かつ,②その目的がもっぱら公益を図ることにあったと認められ,さらに,③摘示された事実が真実であることの証明があった場合,名誉毀損行為の違法性が無くなり,名誉毀損罪が犯罪として成立しないことになります。
なお,刑法230条の2第2項では,公訴提起前の人の犯罪事実に関する事実に関する場合,①公共の利害に関する事実に係るものとみなされると規定されています。
また,刑法230条の2第3項では,公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に関する場合,①公共の利害に関する事実に係るものであり,かつ,②その目的がもっぱら公益を図ることにあったとみなされると規定されています。
これは,公訴提起前の人の犯罪事実に関する事実に関する場合や公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に関する場合,①又は②の要件が満たされることが明らかで,その証明が不要とされているからです。
【名誉毀損事件の刑事弁護活動】
刑事事件では,Aさんは,神奈川県宮前警察署の警察官により名誉毀損事件の捜査を受け,事の重大さに気が付き,名誉毀損事件に強い刑事弁護士をつけることを考えています。
このような名誉毀損事件において,刑事事件に強い刑事弁護士を付けることのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
この点,刑事事件に強い刑事弁護士は,刑事事件に関する豊富な知識と経験から,名誉毀損事件で捜査を受けている被疑者の方に寛大な処分・判決が下されるよう,名誉毀損事件を担当する検察官や裁判官に対して,処分意見書や法廷弁護活動において働きかけていきます。
例えば,名誉毀損事件の被疑者・被告人の方から名誉毀損事件後の反省の様子や今後の更生方法について,刑事弁護士が聞き取って書面化したり,刑事裁判においては被告人質問や証人尋問という形で伝えていったりすることができると考えられます。
このような刑事弁護活動をすることができれば,刑事事件例のような名誉毀損事件においては,もちろん事件を取り巻く事情(前科前歴の有無や犯行の悪質性等)にもよりますが,不起訴処分を獲得したり,公開の法廷で行われる正式裁判を避けて罰金処分(略式命令)を得たりすることができる可能性があると考えられます。
また,上述した「名誉毀損罪が成立しない場合」にあたると考えられる場合,名誉毀損罪の成立を争うための刑事弁護活動を行うことができると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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