神奈川県横浜市中区のインターネットカフェで睡眠作用のある薬物を飲料に混ぜて性交等をしたという報道について検討
横浜市中区にて、インターネットカフェで被害女性に対し睡眠薬のようなものを用いて眠らせた隙に性交等に及んだ男性が逮捕されたという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が検討します。
【報道】
神奈川県警伊勢佐木署は3日、準強制性交の疑いで、中国籍で住所不定、職業不詳の男(29)を逮捕した。
逮捕容疑は、昨年1月22日午後10時20分ごろから同23日午前5時50分ごろまでの間、横浜市中区のインターネットカフェで、意識もうろう状態だった20代の会社員女性に性的暴行をした、としている。男は「覚えていない」などと供述している。
署によると、同市西区の飲食店で女性に睡眠作用のある薬物を飲料水に混ぜて飲ませ、意識もうろうの状態にし、インターネットカフェに連れ込んだとみられる。2人はSNS(交流サイト)で知り合ったばかりだった。女性が被害届を出し、インターネットカフェの利用履歴やSNSなどから男が浮上した。
<神奈川新聞「横浜のネットカフェで女性に性的暴行…容疑で逮捕の29歳「覚えていない」」2024年4月3日(水)23:08配信>
【睡眠薬を飲ませて被害者を眠らせ性的暴行を加えた場合に成立する罪】
今回の報道事例によると、捜査機関は
①被害者に睡眠作用のある薬を飲ませた
②意識が朦朧としていた間に性行為をした
という嫌疑をかけているようです。
■①傷害罪の成立
まず、①について、無断で睡眠作用のある薬を飲ませる行為は、傷害罪に該当します。
条文は以下のとおりです。
刑法204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
傷害罪は、被害者の身体を傷害した場合に成立する罪です。
睡眠作用のある薬物を飲ませる行為は、適量を守った場合、効果が限定的でいずれ作用がなくなる(目が覚める)と考えられます。
しかし、傷害罪の言う傷害とは「他人の身体に対する暴行により…健康状態の不良な変更を惹起(引き起こす)ことをいう」とされています。(大判明45・6・20)
被害者を眠った状態にする行為は、健康状態の不良な変更を引き起こす行為であると言えますので、傷害罪にあたると考えられます。
■②不同意性交罪・準強制性交罪の成立
次に、①の状況で意識が朦朧としている女性に対し、性行為をしている点が問題となります。
報道によると、男性は準強制性交罪で逮捕されています。
≪※法改正前≫
刑法177条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。(略)
刑法178条2項 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
今回の男性が逮捕された準強制性交罪は、令和5年の刑法改正以前の罪名です。
刑事事件は、刑事不遡及の原則といって法律が制定される以前の行為を事後法で処罰することはできないとされています。
今回の場合、事件が令和5年1月22日と、2023年(令和5年)6月16日の刑法改正以前の事件であり、被害者を睡眠作用のある薬で眠らせることで「心神を喪失」させて性交等をしたとされているため、この罪で逮捕されたと考えられます。
【傷害罪・不同意わいせつ罪は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部へ】
加害者が被害者の連絡先を知っている場合、接触する可能性が高く証拠隠滅のおそれがあるとして身体拘束のリスクが高くなります。
また、今回の報道事例の場合、被害者を眠らせてその隙に性交等しているという犯行態様が悪質な点から、実刑判決を言い渡される可能性もあるとして、逃亡の恐れがあり勾留の必要性があると評価されることも考えられます。
弁護士は、事件の性質に即して身体拘束の可能性や釈放・保釈されるタイミング、必要な弁護活動について状況に即して検討し説明することが求められます。
神奈川県横浜市中区にて、家族が被害者に睡眠作用のある薬を飲ませ、その隙に性交等したことで、傷害罪や準強制性交罪・不同意性交等罪に問われている場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご連絡ください。