刑事事件の被疑者・被告人として逮捕・勾留といった身体拘束をされると、①学校や会社へ行けない、②示談や裁判の準備がしにくい、③親しい方やその他外部との連絡が自由にとれないといった不都合があります。
弁護士は、このような不都合を取り除くため、できるだけ早期の身体拘束からの解放を目指して活動します。
釈放
釈放とは、被疑者・被告人を留置所に身体拘束する理由や必要性がなくなった場合に、その身柄を解放することです。
なかなか釈放がされずに身体拘束が長引くと、学校や会社に戻れなくなる可能性が高くなったり、周囲に逮捕・勾留をされたことがバレてしまうなど、もとどおりの生活をすることが困難になります。
そのため、できるだけ早く弁護士に依頼をして、釈放を目指すことが重要です。
1 勾留前の釈放
検察官の勾留請求を受けて、裁判官が勾留決定をすると、10日間、さらに勾留延長決定がされると20日間の身体拘束となるため、勾留はなんとしてでも避けたいところです。
勾留前に、弁護士は、検察官や裁判官に対して、身体拘束の理由や必要性がないことを主張し、検察官の勾留請求や裁判官の勾留決定がされないよう働きかけます。
2 勾留後の釈放
勾留決定がされてしまっても、勾留決定に対する準抗告、勾留決定の取消し請求といった弁護活動をすることができます。
準抗告は、裁判官の勾留決定に対して不服があることを申し立てます。
取消し請求は、勾留後の事情も含めて、勾留の理由や必要性がないことを主張し、されてしまった勾留決定を取消すように裁判官に求めます。
また、被疑者の健康上入院の必要性がある場合や、ご家族の危篤や死亡の場合などには、勾留の執行を停止するとの判断を裁判官に求めることもできます。
3 勾留延長前後の釈放
勾留延長に関しても、勾留と同様に、勾留延長前の検察官・裁判官へのはたらきかけ、勾留延長後の準抗告・取消し請求といった弁護活動をすることができます。
保釈
逮捕・勾留された被疑者が、被告人として起訴されると、基本的に勾留による身体拘束の状態が継続します。
この状態で、身柄を解放する手段としてよく用いられるのが、保釈です。
保釈とは、起訴後に身柄拘束されている被告人が、一定金額の保釈金(保証金)を納付して身柄を解放してもらう制度です。
裁判所に納付した保釈金は、その後被告人が証拠の隠滅をせず、裁判所が出頭を求めれば素直に応じるなどしていれば、裁判終了後に、全額返ってきます。
つまり、保釈金は、被告人の身柄が解放された後、証拠の隠滅や逃亡などを防ぐための担保としての役割を果たすのです。
保釈の手続き
まず、被告人やその近親者、弁護人などが、裁判所に対して保釈を請求します。
これに対し、裁判所は、保釈請求を許すか却下するかの判断をするにあたり、検察官の意見を聞きます。
さらに、法律上定められた手続きではありませんが、通常、保釈請求をした人や弁護人が、裁判官と面接し、保釈の必要性などを訴えるということが行われています。
以上の手続きを経て、裁判所が保釈を許す場合は、保釈請求から2~3日(土日を挟む場合は4~5日)ほどで、保釈の決定がされます。
その際、保釈金の額も決定されます。
決定された保釈金を裁判所に納付すれば、被告人は身体拘束から解放されることとなります。
保釈金の額
裁判所に納付する保釈金の額を決めるにあたって、裁判所は、犯罪の性質や情状、被告人の経済状況などを考慮した上で、仮に身柄が解放されても被告人の出頭を確保できるだけの金額として妥当な額を決定します。
保釈金の額は事案によって様々ですが、一般的な保釈金の相場としては、150万~200万円程度といわれています。
保釈が許される条件
保釈が許されるかの判断にあたっては
①証拠の隠滅をする危険がないこと
②逃亡の危険がないこと
③被害者や事件関係者及びその親族等に接触する危険がないこと
④被告人を監督する身元引受人がいること
の4点が大きなポイントになります。
弁護人は、保釈決定を得るため、主にこれら4点について必要な証拠を集め、説得的に主張していくことになります。
保釈後の注意点
保釈決定がされても、被告人が逃亡したり、証拠の隠滅をしたり、その他保釈決定時に定められた条件を守らなかったりすると、保釈決定が取り消されることがあります。
また、この場合、保釈金の全額又は一部を没収されることがあります。
保釈決定時に定められる条件の例としては、以下のものがあります。
・転居する場合は事前に裁判所の許可を得ること
・海外へ旅行をしたり、国内であっても3日以上の旅行をする場合は、事前に裁判所の許可を得ること
・裁判所の呼び出しがあれば、その日時に必ず出頭すること
・事件の関係者と連絡したり会ったりしないこと
・証拠の隠滅や逃亡を疑われるような行為をしないこと
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