麻薬及び向精神薬取締法
麻薬という用語は、一般的には、麻酔作用や依存性などの危険がある薬物の総称として使用されており、非常に広い意味を含む用語です。
日本において法規制を受ける麻薬とは、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)の別表に規定がされています。
具体的には、アヘン、モルヒネ、ヘロイン、コカイン、THC、LSD、MDMAなどです。国際的には、LSDやMDMAのような幻覚剤の多くは、向精神薬と認識されていますが、日本の法律上は、麻薬として扱われています。
向精神薬というのは、精神に作用する薬物の総称であり、これまた非常に広い意味を有する用語ですが、日本において法規制を受ける向精神薬は麻薬の場合と同じく、麻薬及び向精神薬取締法の別表で指定されている薬物です。
麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬や向精神薬の輸出入を規制し、また免許を持たない者の麻薬や向精神薬の所持・施用などを禁止しています。
麻薬及び向精神薬取締法違反を含む主な薬物犯罪の刑罰
いわゆる「薬物四法」(覚せい剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法)に違反した場合の刑罰は以下の表のとおりです。
覚せい剤 | 麻薬 | 大麻 | あへん | ||||
覚せい剤 | 覚せい剤原料 | ジアセチルモルヒネ(EX.ヘロイン等) | ジアセチルモルヒネ以外(EX.コカイン・LSD・MDMA・マジックマッシュル―ム等) | 向精神薬(抗うつ剤等) | |||
輸入 輸出 製造 |
(単純) 1年以上の有期懲役 (営利) 無期若しくは3年以上の懲役または情状により1000万円以下の罰金併科 |
(単純) 10年以下の懲役 (営利) 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科 |
(単純) 1年以上の有期懲役 (営利) 無期若しくは3年以上の懲役又は情状により1000万円以下の罰金併科 |
(単純) 1年以上10年以下の懲役 (営利) 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科 |
(単純) 5年以下の懲役 (営利) 7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金併科 |
(単純) 7年以下の懲役(製造なし) (営利) 10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科 |
(単純) 1年以上10年以下の懲役 (製造なし、採取) (営利) 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科 |
所持 譲渡 譲受 |
(単純) 10年以下の懲役 (営利) 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科 |
(単純) 7年以下の懲役 (営利) 10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科 |
(単純) 10年以下の懲役 (営利) 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科 |
(単純) 7年以下の懲役 (営利) 1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科 |
(譲渡及び譲渡目的所持に限る) (単純) 3年以下の懲役 (営利) 5年以下の懲役又は情状により100万円以下の罰金併科 |
(単純) 5年以下の懲役 (営利) 7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金併科 |
(単純) 7年以下の懲役 (営利) 1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科 |
施用 使用 |
(単純) 10年以下の懲役 (営利) 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科 |
(単純) 7年以下の懲役 (営利) 10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科 |
(単純) 10年以下の懲役 (営利) 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科 |
(単純) 7年以下の懲役 (営利) 1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科 |
(単純) 7年以下の懲役 (吸食のみ) |
||
栽培 | (単純) 7年以下の懲役 (営利) 10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科 |
(単純) 1年以上10年以下の懲役 (営利) 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科 |
営利目的で上の表の各行為をした場合、表中で(単純)と(営利)で分けて記してあるとおり、刑が重くなります。
営利目的とは、違法薬物を売買するなど、自ら財産上の利益を得ることを目的とすることや、第三者に財産上の利益を得させることを目的とすることをいいます。
違法薬物取引は、反社会的組織の資金源になっているともいわれており、そういった組織やそれによる違法薬物の蔓延を助長しないためには、営利目的での各行為をより厳しく取り締まる必要があると考えられるからです。
麻薬及び向精神薬取締法違反
1 情状弁護
麻薬及び向精神薬取締法違反にあたる行為をしたことに争いがない場合は、減刑や執行猶予付判決を目指すこととなります。
犯行を素直に認め反省している旨を示した上で、薬物に対する依存性・常習性がないこと、再犯の危険がないこと、共犯者との関係では従属的な立場にあったことなどを説得的に主張し、裁判官に刑を軽くしてもらえるような弁護活動を行っていきます。
薬物犯罪においては特に、本人がいくら「もう二度とやらない」と言っても、それだけでは裁判官に信用してもらえない傾向にありますから、執行猶予付き判決の獲得や減刑のためには、更生のため周りの協力を得られる環境づくりができていることを裁判で示したり、身柄が解放されていれば実際に薬物依存の治療を開始してそれを裁判で主張したりすることが重要です。
2 身柄解放
麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑で逮捕・勾留されてしまった場合でも、事案に応じて釈放や保釈により身柄拘束を解くための弁護活動を行います。
特に証拠隠滅のおそれがないことや逃亡のおそれがないことを示す事情を積極的に主張することが早期の釈放・保釈につながります。
3 無罪判決・不起訴処分獲得
身に覚えがないにもかかわらず、麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑で捜査を受けることがあります。
そのような場合、決して取調官の決めつけによる取調べに屈して偽の自白をするなどして冤罪を作り出してはいけません。
速やかに弁護士に相談し、当時違法な薬物であるという認識が全くなかったことや、麻薬などの存在自体に気づいていなかったことなどを証拠に基づいて捜査機関・裁判官に対して主張してもらいましょう。
また、仮に麻薬及び向精神薬取締法違反にあたる行為をしてしまった場合でも、それが捜査機関による違法な捜査によって発覚したものであれば、その違法性の重大さゆえに不起訴処分や無罪判決を得られる可能性があります。
ですから、職務質問、所持品検査、採尿、採血、捜索、・差押え、逮捕・勾留、取調べなど各捜査段階において違法・不当な捜査を受けたのではないかとお考えの方は、すぐに弁護士に相談してください。
弁護士は、捜査に決して許されない重大な違法行為がなかったか、それによって重要な証拠である麻薬などが収集されたのではないかという点を徹底的に調査・検討して、不起訴処分や無罪判決の獲得を目指します。
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