不同意わいせつ事件でいわゆる再逮捕をされたら?神奈川県小田原市での架空の事例を通じて検討

不同意わいせつ事件でいわゆる再逮捕をされたら?神奈川県小田原市での架空の事例を通じて検討

淫行

記事では、神奈川県小田原市にて不同意わいせつ事件を繰り返していた男性が逮捕され、その後再逮捕されたという架空の事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が検討します。

【ケース】

神奈川県小田原市在住のAさんは、小田原市内の会社に勤める会社員です。
Aさんは、性的欲求を満たす目的で、深夜に小田原市内をうろつき、歩いている女性を探して1人であることを確認したうえで被害者の後ろから突然抱きつき、胸を揉みしだくなどのわいせつ行為を繰り返しました。
小田原市内を管轄する小田原警察署の警察官は、複数人の被害者による被害申告を踏まえ、捜査した結果Aさんによる犯行であるという裏付けが取れたため、Aさんを不同意わいせつ罪で通常逮捕しました。

Aさんの担当弁護士は、Aさんの家族に対し、Aさんは再逮捕される可能性が高いため身体拘束の期間は長期に亘ると説明しました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【不同意わいせつ事件について】

令和5年6月16日の改正刑法により、従来「強制わいせつ罪」「準強制わいせつ罪」と称されていた罪が「不同意わいせつ罪」と変わりました。
条文は以下のとおりです。

刑法176条1項 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
1号 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
2号 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
3号 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
4号 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
5号 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
6号 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
7号 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
8号 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2項 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3項 16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。

法改正以前の刑法では、強制わいせつ罪の定義は「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者」と「13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者」としていました。
暴行又は脅迫とされているため、暴力や暴言のほか、隙をついて行うわいせつ行為も暴行として処罰対象とされていました。

今回想定している事例では、Vさんは抵抗する隙があり、Aさんも暴行や脅迫を行っていないことから、強制わいせつ罪としては問えなかったと考えられます。
しかし不同意わいせつ罪の場合、176条1項5号で「同意しない意思を…表明し」「わいせつな行為をした者」としていることから、Aさんの行為は不同意わいせつ罪に当たると考えられます。

【再逮捕とは?】

我が国の刑事司法では、一罪一逮捕一勾留が原則です。
つまり、一つの犯罪に対して逮捕・勾留は一度限りであるべきだとされています。
そのため、1つの事件に対して被疑者を拘束できるのは逮捕から最大で23日で、担当する検察官はそれまでに被疑者を起訴して起訴後勾留に移るか、釈放しなければなりません。
但し、刑事訴訟法では以下のとおり規定されています。

刑事訴訟法198条1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、30万円…以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
3項 検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

この刑事訴訟法199条3項をみると、一度逮捕している被疑者に対し、同一の犯罪で改めて逮捕することを、刑事訴訟法は認めていることになります。
判例も、「同一の被疑事実によって被疑者を再度にわたり逮捕することも、相当の理由がある場合には許される。」としています。(東京高判昭48・10・16)
但し、判例が「相当の理由がある場合には」と限定的な言い方をしていることから、刑事訴訟法のいう再逮捕がなされることは極稀です。

ところで、テレビやインターネットニュースなどでしばし「神奈川県警小田原警察署は●●容疑者を不同意わいせつの疑いで再逮捕した」という報道をよく目にすることがあるかと思います。
これは、刑事訴訟法上の意味での再逮捕ではなく、別の事件で逮捕・勾留されていた被疑者を、他の事件で逮捕した場合を指すことがほとんどです。
上記のケースでも、こちらの意味で再逮捕という言葉を用いました。
つまり、Xの事件で逮捕・勾留していた被疑者をXの事件で逮捕することが本来の刑事訴訟法が想定している再逮捕で、これは一罪一逮捕一勾留の原則の例外と言えますが、Xの事件で逮捕・勾留していた被疑者をYの事件で逮捕することが一般的に言われる再逮捕で、これは一罪一逮捕一勾留の原則に反しません。

再逮捕が、刑事訴訟法上の意味であるか一般的な意味であるかは、極めて重要です。

【いわゆる再逮捕されそうな場合はすぐに弁護士に相談を】

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部では、ケースのように余罪と呼ばれる別の犯罪を多数抱えていて今後再逮捕が複数回予定されているという事案をこれまでに多数扱ってきました。
基本的に、一般的な意味での再逮捕は法律上避けては通れません。
しかし、弁護士は捜査機関(警察官・検察官)とも協議し乍ら、被疑者の捜査に協力しつつ早期の身柄解放を求めます。
神奈川県小田原市にて、家族が不同意わいせつ事件を起こしてしまい逮捕され、いわゆる余罪での再逮捕が見込まれる場合、すぐに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご連絡ください。

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