従業員が商品や備品を転売するなどの行為で問題となる窃盗罪や横領罪などの成立について、その場合に刑事事件化を阻止した事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律所横浜支部が解説致します。
【事例】
神奈川県川崎市川崎区在住のAさんは、川崎市内の飲食店でアルバイトとして勤務していました。
その勤務中に、店で提供している市場ではあまり出回らない日本酒をこっそりと自分の鞄に入れ、持ち帰ってはインターネットオークションで転売していました。
Aさんの行為に気付いた店のオーナーはAさんを追及し、Aさんはそれを認めたため、オーナーはAさんとともに川崎市川崎区を管轄する川崎警察署に相談に行きました。
しかし、その時点でオーナーは被害届を提出せず、まずは弁済の方法などについて話し合いをすることにしました。
Aさんは刑事事件化を阻止したいと考え、弁護士法人あいち刑事事件総合法律所横浜支部の無料相談を受けたのち弁護を委任して頂きました。
≪守秘義務・個人情報保護のため、事件地や一部事件内容を変更しています。≫
【窃盗と横領の罪】
Aさんの事例では、飲食店で従業員が日本酒を無断で持ち帰り、それを転売したというものですので、窃盗罪・横領罪・業務上横領罪のいずれかが成立することになります。
窃盗罪・横領罪・業務上横領罪の条文はそれぞれ以下のとおりです。
(窃盗罪)
刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(横領罪)
同252条1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
(業務上横領罪)
同253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
まずは窃盗罪と横領罪・業務上横領罪の違いについて、窃盗罪は他人が占有している物を窃取する行為で、横領罪・業務上横領罪は自らが占有する(預かっている)物を自分の物として処分することを意味します。
次に横領罪と業務上横領罪の違いについて、これは「業務」という点が問題となります。
法律上の「業務」とは単に仕事という意味ではなく、「人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務」とされています。
今回の事例について、例えば店の運営や在庫の仕入れ・管理を任されている店長などが同様の行為を行った場合には、その地位に基づき反復継続して行う業務の中で日本酒を持ち去っていることになるため、業務上横領罪の適用が検討されます。
また、例えばAさんが店長に「店のワインセラーがいっぱいだから、今回だけ自宅の冷蔵庫に入れておいて持って来て」と言われていたもののそれを転売したという場合であれば、仕事ではありますが反復継続して行う事務ではないため、業務上横領罪ではなく単純横領罪が適用されます。
しかし、Aさんはあくまでアルバイトという立場であり、日本酒を提供する業務は行っていますが「占有」しているわけではないため、窃盗罪が適用されます。
【刑事事件化を回避する弁護活動】
今回、事件の被害者であるAさんの勤務先のオーナーは、川崎警察署に相談に行きましたが被害届は提出しませんでした。
被害届とは被害者等が捜査機関に対して被害を受けた旨を申告する手続きであり、被害届がなければ捜査機関は捜査することができないというわけではありませんが、実務ではその多くで被害届が受理されてはじめて捜査が開始されます(器物損壊罪などの親告罪は、「刑事告訴」がなければ起訴できません。)。
そのため、Aさんは逮捕されたり、取調べを受ける等の捜査を受けていませんでした。
そこで、Aさんから依頼を受けた弁護士は、早期にオーナーに連絡したうえでAさんが謝罪と弁済の意向があることを伝えました。
その後の示談交渉の結果、Aさんは現実的に可能な金額・期間で弁済をすることを約束することで、オーナーはAさんの件で被害届を提出したり刑事処罰を求めたりしない旨の約定を設けることが出来ました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律所横浜支部では、被害届は提出されていないものの今後の対応次第では被害申告され、刑事事件に発展してしまうという場合の弁護活動を行っています。
神奈川県川崎市川崎区にて、窃盗罪や横領罪、業務上横領罪で今後事件化される可能性があるため刑事事件化を阻止したいという場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律所横浜支部にご連絡ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で相談を受けることができます。
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