器物損壊罪

器物損壊罪

前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金若しくは科料に処する(刑法261条)。

器物損壊罪でいう「他人の物」の中には、文書や建造物は含まれません。文書や建造物を損壊した場合は、別の規定(刑法258~260条)で罰せられることになります。

それら以外の一切の他人所有物が器物損壊罪でいう「他人の物」にあたります。

それに加えて、自己所有の物であっても、差押さえをされた物や、賃貸をした物を自分で損壊した場合も器物損壊罪が成立します(刑法262条)。

「損壊」とは、物の物理的な破壊だけでなく、その物の効用を害する行為一切を意味します。つまり、物を通常どおりに利用できないような状態にすれば「損壊」にあたります。

例えば、食器の上に放尿する、池の中の鯉を流出させる、窓ガラスに大量のビラを貼り付けるなどの行為は、物の効用を害する行為として「損壊」にあたります。

「傷害」とは、他人のペット動物等に対する行為が想定されています。

事例

Aさんは、隣の家に住むBさんと古くからの知り合いでしたが、Bさんの子供が弾くピアノの音がうるさいと伝えたことをきっかけに、近頃は口論が絶えなくなっていました。
ある日、Aさんは、Bさんに嫌がらせしようと思い、Bさんの自動車にBさんの悪口をペンキで書き殴りました。
Bさんは、大事にしていた自動車を汚されたため、激怒してAさんを告訴しました。

Aさんの行為は、どのような罪に問われるでしょうか?

(解説)

今回のケースで、Aさんは、Bさんの自動車に落書きをしました。

Bさんの自動車は、問題なく「他人の物」にあたると言えます。

それでは、ペンキで落書きをするというAさんの行為が「損壊」、つまり物の効用を害する行為にあたるかについてですが、この行為により、Bさんの自動車の外観が著しく損なわれています。

そして、ペンキは容易に取り除くことができません。

とすれば、Aさんの落書きにより、Bさんは心理的にとはいえ通常通りに自動車を運転することができなくなるわけですから、Bさんの自動車の効用を害するに足りる行為であったと評価されます。

したがって、今回のケースにおけるAさんの行為は、器物損壊罪に当たると言えるでしょう。

なお、一点注意を要することがあります。

それは器物損壊罪が親告罪であるということです。

親告罪とは、被害者が告訴をしなければ、起訴することができない犯罪です。

今回はBさんがAさんを告訴しているため、Aさんは器物損壊の罪に問われることになります。

器物損壊事件における弁護活動

早期の示談交渉が重要

器物損壊事件において、早期に被害者との示談を成立させることができれば、不起訴処分を狙うことができます。

示談の際、告訴の取下げまで取り付けることができれば、器物損壊罪は上述のとおり親告罪なので、起訴される可能性はゼロとなります。

また、告訴の取下げまで取り付けることができなくとも、器物損壊罪の場合は、示談が成立すれば不起訴というケースはよくあります。

不起訴となれば、前科が付くこともありません。

また、そもそも告訴される前に示談を成立させることができれば、事件化して警察の呼び出しを受けるなどのことを回避することが望めるでしょう。

示談は、当事者同士ですることもできなくはないですが、こじれてまとまらない可能性があります。

特に上記のような事例では、当事者同士の確執が強く、冷静な話し合いは見込めないかもしれません。

器物損壊罪で告訴されそう、または告訴された場合は、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。

器物損壊事件でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の弁護士に一度ご相談ください。

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